第10章 アザレアのひととき
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〜「はあ?中也の女の子の趣味とか僕が知るわけなくない?」
「いや、うん?ああいうのは普通にいい子にしてればコロッと落ちるでしょ、簡単だよ中也なんて、ちょろいちょろい」
「僕の方がよっぽどいい男だと思うけどなあ〜…」〜
彼に面倒を見てもらっていた時期に聞いていた話は、確かそう。
中原中也がポートマフィアに在籍することになってからというもの、毎日そのお話を聞きに行っては嫌な顔をされる…そんな日常も、今は昔の話である。
普通にいい子、とはどういうものだろう。
仕事を全部ちゃんとする?
『終わりました〜』
「おつかれ」
たまにはちゃんと本人にも分かるように差し入れをしてみる?
『…あの、お菓子とかいりますか』
「悪い、今こっち忙しいからまた後でな」
『そ…ですか』
いい子。
そう、私はこの上司様にとってのいい子にならなければならない。
無理を言って同じ執務室にしてもらったんだ、一緒にいられる時間も増えたし、ちょっとくらい何か彼に報わなければバチが当たるというものだろう。
いや、まあそれは建前で、実際のところは最近たて続けに仕事が舞い込んできて…なんというかその。
「……」
中原さんが、相手をしてくれない。
いや、うん、だからと思って先回りして仕事を奪っていくのに次の仕事次の仕事で…それをもらおうとしたらいいからお前は仮眠をと、ベッドに放り込まれる始末。
ぜんっぜん寝れないし。
寝てほしいんならせめて一緒にいて寝かしつけてくれたら…とかそういうことを言ったらうざがられるんだろうけど。
なんでこんなに忙しいのかと思ったら、大きな抗争の後始末。
さらにその隙にとポートマフィアにおいたをしてくれる輩の処理。
忙しいのは私に全部回せばいいのに。
『…お仕事私も「いいから。三時間くらい寝かせてやれるから休んでろ」……』
話するのもうるさいってか。
いやいや、中原さんに限ってそんなこと考えるわけ…ないよね?
うん?ないない、中原さんだもん、いくらムカついてたってそんな…
__こいつももう二徹過ぎてんだろ、とっとと家帰してやんねぇとなのに__
『!?♡』
こっ、こういうとこ〜…!♡♡
さすが中原さん、私のスーパー上司様。
こっそりタブレット端末を持ち込んでベッドに入り、またこっそりと彼の仕事のお手伝いをすることにした。
