第10章 アザレアのひととき
キッチンに立つ中也さん…にひっついたまま、調理開始。
「とりあえず今日は晩飯多くなるだろうから軽食な。多分“あれ”だろ?」
買い出しはもう済んでいるものと、出かけに行った卍里、残夏君にカルタ。
野ばらちゃんは凜々蝶ちゃんと、それについてきたそう君と装飾開始。
本来私の仕事であったはずのマーク君連れ出し係は、まさかの連勝が買って出てしまったので…何故だか、ゆっくりさせられている。
装飾を手伝わせてももらえなかったのだ。
「今日はともかくとして結構作戦書作んのにバタバタしてたのは皆分かってんだ。お疲れ様ってことでゆっくりしとけ」
『…お疲れ様のチュー』
「……何、もう欲しくなったのかよ」
後頭部に手が添えられる。
それから唇に触れる感触に少しビクリとして、柔く吸い付く彼の想像以上の長さに羞恥の方が勝ってきた。
だ、ダメ、こんな長いのしてたら心臓もたない。
息続かな____
『ッッハっ、!!!…っは、ッんぅ、!!?!?』
離してくれたところで反射的に息を吸った。
その刹那、また降ってくるそれ。
こ、この人…!
「…、ン」
ヌル、と唇をなぞる舌。
しかし無理に入ってくる様子は無い。
腰が砕けるほどの刺激を想像して、首を横に降ればそれを引っ込めて、また普通のキスを続けてくれた。
…聞いて、くれるんだ。
一通り堪能されたら解放されて、息を整える間額や頬にも続けられて。
『ッ、…ご、めん…』
「…いいよ、楽しみは夜に取っとく」
この人のディープキス…あれされて、そのあと皆と顔合わせられる気がしない。
あんなのされたら私、そのまま抱いて欲しくなっちゃうからだにされちゃってるのに。
我慢、出来なくなっちゃうから。
「リアちゃん俺で感じるとすぐ可愛くなっちまうからなぁ…雪小路に煽られてしたくなっちゃった?」
『っ、ん…』
「素直でよろしい」
撫でられて…褒められて。
どんどん嘘がつけなくなっていく。
「…ちゃんと、好きだから」
『!!、…ぁ、…う、ん』
改めて言われるなんて、思わなかった。
さっきから、触れ合ってる分だけ心の声から私への愛なんか、伝わっていたし聞こえていたのに。
『……わ、私も…です』
「!そ、うか…はは、何食べたい?」
『中也さん…♡』
「俺以外で」
『…中也さん?』
「グラタンにしてやろう」