第10章 アザレアのひととき
契約を済ませ、荷物を部屋に置いてからマークくんを連れてラウンジに移動する。
妖館内の案内を経て、最後にそこに戻れば人が集まっていた。
「リアちゃんおかえりなさい!!おねーさんにただいまのチューを…」
「させるか、触んな」
『ぅわッ!!?』
野ばら姐さんに迫られたところを引っ張られ、避ける。
ぽす、と彼の胸元に受け止められればぶわわ、と恥ずかしさに泣きそうになった。
「…あらぁ、あんた随分大胆に出るようになったのねぇ。って、そこの男がもしかして入居者さん?」
ふと、気付いていたのかどうか定かではないけれどようやくマーク君に触れてくれた。
「どもども、初めまして。先祖返りじゃない異能力者なんだけど、マーク・トウェインです。よろしく!」
「おー、どもども。リアの元許嫁じゃん、よっすー」
「レンレン久しぶりー、元気してた??」
『馴染むの早すぎでしょあんたら』
おかしいな、面識は数回程度だったはずなのに。
「反ノ塚は知り合いだったのか…というか元許嫁!?」
「リアの元許嫁!!?」
「元だから別にいい」
「「カルタ/髏々宮さん!!!」」
グサリとマーク君の胸に矢が刺さる。
しかし彼は折れない負けない不死身の変態なので、大丈夫。
「…いいんだよ、そばにいさせてもらえるならそれで」
「あらやだ一途ぅ…ボク君みたいな子大好き♡よろしくねマー君、夏目 残夏だよ☆」
「男と好きあう趣味はちょっと無いかな」
「わあ結構ドライ」
『打たれ強さ、M』
ああああ、と頭を抱える中也さん。
「まあまあまあ、それじゃあマー君俺と遊びにでも行かない?良ければだけど」
「レンレンと一緒に!?行く行…い、行ってきてもいい?リア!」
『えっ、私!?い、いいよ?てかそんないちいち許可取らなくてもいいじゃん、あんた達友達なんだから』
「!!うん、行ってくる!」
やけに嬉しそう。
一瞬泣きそうになったのは、恐らく悟りの私にだけ伝わった。
ああ、そうか。
同僚とかじゃなくて、そういう気の置けない友達と会うの久しぶりなんだ。
すたこらさっさと連勝について行ってしまったマーク君に少し安心した。
「…あいつら揃って俺に気ィつかいやがって」
『?リアにじゃなくて??』
「どう見てもお前にじゃねえよ」
飯でも作ってやる。
その一言に、目の前が明るくなった。