第9章 蛍石の道標
「で、その人間を?もう一人契約させろって??」
『…だ、だめ?』
「あんたにダメかって聞かれたらアタシは断れないでしょうが!!」
妖館にて、歩さんことメイド…の、オカマを自称するその人にマーク君の契約書をお願いするのだが。
『いや、そのダメならダメでも大丈夫だから…』
「そうじゃなくてね…ちの、あんたちょっと席外しなさい」
「はっ、了解しましたー!」
『ごめんちーちゃん』
歩さんの肩に乗っていたコロポックルの先祖返り、小人村ちの。
彼女に退席してもらってから、歩さんと私、中也、それからマーク君の四人で話を再開する。
「…そこの新しい子、あんたの本家と関わりあったんでしょう?」
『どっちかっていうと、被害者っていうか…』
「まあ元々あんたが契約してる部屋だから、それの使い方に関しちゃ何も文句はないけどね…“大丈夫”なんでしょうね?本当に」
『マーク君は大丈夫だから』
「こっちはあんたのしけた顔拝むために契約書渡すのなんか二度とゴメンなんだから」
毎度毎度、こっぴどく確認を繰り返してくれるのは、この人なりの私への心配だ。
いつも、そう。
「まあ中原が問題なさそうだし、あんたがそこまで自分から言ってくるってことは本当に大丈夫なんでしょうけど??…シークレットサービスにもするわけ?」
『ううん、出来ればここのスタッフの方に回ってもらいたいなって。その方が休みも作れるだろうし』
「へぇ、ほんとに信頼してんのね……良かったわ、あんたのそんな顔、前世じゃ拝めなかったから」
この人は、前世の記憶を持っている。
ちーちゃんは持っていないので席を外してもらったわけなのだが…割と高確率で、私のことを覚えていてくれているのだ。
さすがは博識のオカマ。
「はい、そこにサインと印鑑。必要書類はこっちに書いてあるから、いつでもまた持ってきなさいね色男」
「…?イロオトコ?」
『マーク君歩さんに気に入られちゃったねぇ、かっこよくていい男だってさ』
「まあ肉体美的には中原がドンピシャでアタシの好『歩さん…?』あんたがそんなにキレてんの珍しいじゃない、どうしたのよ」
『言っとくけどこの人リアの彼氏だから』
「…あら、ほんとに珍しいこともあるものね。どこか打った?」
『嘘じゃないもん!!!』
軽くあしらわれた、失礼な。
本当のことなのに。