第9章 蛍石の道標
「そんでもってリアちゃん、今日体温高いってことないか?」
『?だいじょぶ』
「隠してるんじゃなく?」
『ん、隠してない』
「能力で誤魔化してるわけでもなく?」
『誤魔化してない』
朝から感じる違和感に言及すべく、尋問タイムに突入。
「じゃあなんで朝から俺の方見て話してくれねぇの」
『は、?話してますけど』
俺が目を合わせにいくと二秒としてもたずに逸らされる。
それみたことか。
「もう一回」
『気分じゃないから無理…』
「…もしかして俺お前に何かし『気分になったからちょっとだけね!!!』一瞬とかノーカンだノーカン」
すぐ逸らす。
こちらを全く見てくれない…どころか俺に顔を隠してばかり。
こっちが見てねぇ時に自分はガン見してるくせに。
「幹部命令だ、何隠してんのか吐きやがれ」
首根っこを捕まえて、最近新調した仮眠用のベッドに連行する。
『っひゃわ!!?な、なっ…!』
耳と尻尾一本の変化は解けないあたり、嘘はわかる。
さぁて、どう白状させようか。
「…教えてくれないんならヤラシイことするけど」
『今更ヤラシイこととか何言っ…へ、』
顎を指で軽く支えて、そのままぐ、と許可もなく顔を近づけて。
いつまで経っても唇に触れない俺に向けて、ぎゅっと目を瞑ったリアがそれを開く。
「しませんけど」
『……ッあ、…?、??』
思わず少しニヤついてしまったのだが、少しの間呆然と俺を見つめて、我に返ったかのように顔を逸らして…ふにょふにょと妙な動きをする耳と、しかしどこか満更でもなさそうにパタつく尻尾。
そして、小首を傾げてばかりいる様子。
皆目見当がつかねえ、本当にどうしたこいつ。
とりあえずと背中に腕を回してゆっくりとそいつを押し倒していく。
身を任せきってるあたり既にSMスイッチ切り替わってんだよなぁ…
『り、リアにひどいことするつもりでしょ。え、エロ同人みたいに…エロどう、じん…みたいに!』
「パニクりすぎてるから一旦落ち着け?あとそれ誰に教えられた」
『連勝』
「あいつ今日帰ったらシュレッダーにかける」
ろくでもねぇことばっか吹き込みやがって、これだからあのマンションの住人は…!!!
『…で、も……ヤラシイことする、って…』
「……我慢ってのを覚えようかリアちゃん」
狐耳の内側を、指で触れて撫でていく。