第9章 蛍石の道標
にゃんにゃんごろごろ。
そんな音が似合いそうな程に腕にじゃれてくっついてくるリア。
「そんなに甘えてももうケーキはねぇぞ」
『中也さんそゆとこデリカシーない…』
「違ったのか?そりゃすまんな」
『でもそこも好き…♡』
うわぁ、死ぬほど尻尾揺れてる。
しかも話微妙に噛み合ってねぇし。
これがリア様デレデレモード、恐るべし。
歩いて戻った執務室。
昼ご飯を共にして、作ってきた弁当、そして甘味を食べ終えて。
思うがままに甘やかして至福のひとときを過ごしていただけなのに。
特に何をしたわけでもない。
ただいつものように彼女を撫で、愛でて可愛がって、毛繕いするように耳や尻尾を撫でたり、手ぐしで髪をといたり。
いつものこと、たったそれだけ。
…そんなことが、とんでもなく嬉しいらしい。
『…抱っこ』
「!いいですよ?」
椅子に座ったところでこちらに向かい合わせになってやってくるそいつに強請られ、膝に横向きに座らせるように抱き抱える。
『おかえりなさい…中也さん、』
「はは、いつまででも言ってんなぁそれ?…ただいま、リアちゃん」
額にキスして、めいいっぱい撫でて。
するとこの子は二人きりの時、少しむぅ、と口を尖らせるのでそこに触れ合わせるようにまた口付ける。
「…機嫌直った?」
『……なお、った』
朝から幹部ミーティング。
更には昼間も結局他の奴らと食べることになった流れで、少し妬いてらっしゃった御様子。
ぱた、と尻尾の振れ方が変わる。
「今日はもっとって強請らねぇの?」
『中也さんから、された…から、いい』
うわ、顔真っ赤。
隠すようにして胸元に押し当てられるが、その実ちらりと見えるだけでも十分にわかる。
どんだけ俺だよ、お前。
「ああ、そういやいい子で待っててくれたお嬢さんに朗報。最終作戦、俺と動けるってよ」
『!?本当!!?』
「本当本当。つってもまあ、万が一のための安全策係みてぇなもんだけど」
『?…殴り込み?』
「残念ながらそりゃ遊撃隊の管轄だ、俺らは地上待機…つぅかまあ、芥川の奴が独断で勝手に殴り込みに行っちまったからなんだが」
『リアも独断で殴り込みに行「ダメ」芥川さんだけずるい』
こいつもなんだかんだ結構好戦的だよなぁ…
「俺との仕事が不満ですか?それなら行ってこい」
『……仕方ないですね』