第9章 蛍石の道標
異形の者共を焼き尽くし、斬り尽くして、蒼い焔が消える。
すると気が緩んだのか、その場にへたりこんで倒れるそいつ。
「…ッ!!おい、おまっ…何でここに来た!!?」
急いで駆け付けて、からだを起こして支える。
が、そこで違和感。
着ていたシャツが、妙な破れ方をしている。
その上ボタンがいくつか解れたり、取れたりして…鎖骨には、何かに噛まれたような痕。
「ど、こで…やられた、これ」
『……わす、れた』
「なわけあるか…ッ、正直に言わねぇと口聞いてやらねぇぞ…!!?」
外に、出てきて襲われたんじゃ…ないのか。
さっきまで屯してきていたあいつらは、確実にお前を狙っていた。
出てきて、狙われたんじゃ、ないのかよ。
『…声うるさ「今はそんなこと言ってる場合じゃ…」ッひゃ、…ぅ、』
……なんだ今の声。
「……おい、どうした」
『ど、うも…っぁ、やだ…ッ』
頬に手を添えて、こちらを向かせる。
が、どうしたことだ。
潤んだ目に、上気した肌。
月明かりの中でも分かるほどに真っ赤になったそれは、何も熱のせいだけではない。
それに、さっきから…
「………お前、何か薬盛られたか」
『っ、関係な「答えろ」ッあ、ぅ…』
歯を食いしばって、太腿を固く閉じて…跳ねる身体に恥ずかしがって。
身体だけが、興奮しきってんじゃねぇか。
どっからどう見てもお前…
「…話は後だ、とりあえず隠れてろ」
外套を頭から被せて、背中に背負って。
少し仕事を進めたところで部下達と合流し、任務は完了。
「悪いが俺は先に戻る、野暮用が出来ちまった…後任せていいか」
「…御意」
恐らく誰もが気になっているであろう、俺の背中。
まあ、流石に誰もつっこんではこなかったが。
「なんで出てきちまった」
『…』
「なんでこんな無茶しやがったか聞いてんだ、怒んぞ」
『ぁ、…えと…………あそんで、ました』
どこがだ。
遊んでた奴の状態じゃねえだろこれは。
「じゃ、せめてこっちはこたえろ。俺に言いたくない?」
暫くして、縦に振られた首の感触。
…仕方ねぇな、ったく。
「そういう事なら…初回サービスだからな。ほら、横んなってろ病人は」
『ック、ぁ…』
「………しんどいとこ悪いけど、結構クるからそういう顔されると。…もう少しの間、我慢してくれ」
後部座席に寝かせて、拠点に戻る。