第9章 蛍石の道標
言っていたとおりにアイスを食べてもらって、自分が執務室にいられる時間は寝てもらって。
嫌だという気持ちはまあ分かる程度の表情ではあったけれど、執務室から送り出してくれた彼女に何かの成長を見たような気がした。
手振ってたしなんだあれ天使か。
お前そんな可愛らしい仕草すんの初めてじゃねぇか。
「中也さん、何かいい事ありました?」
合同で赴いている武闘派集団こと黒蜥蜴の十人長、立原道造からの指摘。
いい事があったように見えるのか、人からは。
「…野良猫が懐いてきたらそりゃな」
「さては白縹ッスね??」
「なわけねぇだろ、あんな俺の事舐め腐ってる小娘」
「そんなこと言って今日連れ回してたの結構話題になってましたよ?しかも飯まで作ってたとか」
「熱出してる上に家から出てきて、帰らせようにも駄々こねて居座ってたんだよ。面倒見る奴俺しかいねぇだろ」
それだけだ。
そんなわけあるか、半分私情だこの野郎。
「まあそれはそうとして、今回あの子一人抜けた穴埋めるために黒蜥蜴三人って、中々実力あるんじゃないです?実際のところ」
「実力なぁ…まあまだ本気見た事ねぇから分からねぇけど、その実
頼りにできるレベルだとは思うぞ。足引っ張るどころか余裕の様子で敵さん撹乱しまくってっし」
「異能力持ちなんですか?」
「…さあ、それは知らねぇ。つまりまだ生身の実力しか見たことねぇわけだけど……あれで能力持ちなら準幹部ってのも納得だよ」
白縹のこと褒めるとか珍しい、なんて本気で驚かれるので褒めてはいないと訂正する。
いやまあ、仕事においては本当に優秀な奴だと思うが。
日頃の態度と放浪癖さえなけりゃあな。
と、そんなこんなで今日の敵さんの拠点に到着。
今日はリアの抜けた影響もあってかなりの数がこちらにいるため、正面突破ではなく、エントランス…それから、俺は屋上から単身突入。
最終的に挟んで残らず殲滅といこうじゃあないか。
時間になるまで屋上で待機。
タバコの火を消して、広津からの合図で一斉突入。
親玉の首から、掻っ攫う。
「!!?!?だ、っ誰だ!!!?」
「ポートマフィア…五大幹部の一人だ。じゃあな、三下共…!」
銃弾の雨など効きはしない。
それならばと刃物や体術に切り替えるそいつらを、異能も使って一掃して。
…早く、帰ってやらねぇと。