• テキストサイズ

glorious time

第9章 蛍石の道標


昼休憩の時間まで寝かせる事に成功し、仕事が一段落したところで彼女を起こす。

「起きろ、昼飯行くぞ」

『めんどくさい』

「駄々こねんな、食堂」

『中原さんて病人の女の子歩かせるような人なんだ〜、横暴』

寝起き一番から調子戻ってきてんじゃねえか。

「言ってろこの社畜、食って寝ての生活の何が不満なんだよ」

『…おんぶ』

「は???」

『お、ん、ぶ』

ドストレートに繰り返さんでいい。
おんぶ?なんでいきなりおんぶなんだよ、意味が分からな…

「…ほぉ?おぶって欲しいのかお前、俺に」

『してくれないならついてかない』

「なんなら姫抱きで連れてってやるわ、覚悟しやがれ」

『は…え?えっ、や、ちょっ、中原さん!?』

背中と、後ろ腿あたり。
腕を滑り込ませたあたりで、反射的にかしがみつかれる。

こうしてりゃ女の子なんだがな。

『ま、まって中原さっ…近…ッッ、』

「…嫌がってなさそうだから却下だな。光栄に思え、俺が手取り足取り看病してやるよお嬢さん」

『え、な…なん、で…』

「とっとと懐いちまいな。大人には甘えとくもんだぜ」

リア、子供じゃない…

小さく反論されるのに、目を丸くする。
本当に嫌なんだな、ガキ扱いされるの。

別に、馬鹿にしてる訳じゃねえのに。

「…意地張らねぇ女の方がレディだと思うけど?」

『なにそれ…中原さんのタイプ?』

「少し違うな。お前素直な方がよっぽど可愛いのにって思って」

『は…ぇ…、っ…?』

途端に固まる彼女は、思考が停止しているらしい。

「だから、お前可愛いんだって」

『……口説い、てます…か、それ』

「どっちだと嬉しい?熱で弱ってるなら本音が聞けそうだなぁこりゃ」

悪い顔をする。
やっべ、何か歯止めきかねぇこのままじゃ。

もっと、もっとこいつの表情を変えてやりたい。
もっと俺に夢中になってしまえばいい。

『…どっ、ちでも』

満更でもなさそうな顔して言ってんじゃねえよ。

『中原さんはその…結婚、してますか』

「してたらこんな風に女の構成員相手しねぇだろ」

『ぁ…えと、彼女さんとか』

「同じだ、それも」

『……気になる人、?』

「はは、絶対教えてやんねぇ」

これで自覚無しってこいつ…天然どころの話じゃねえ。
そのものの概念が、自分の中で欠落してやがる。

「もう少し待ってろ」
/ 903ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp