第2章 桜の前
長い長い口付けをされ、息が持たなくなってきた頃に彼の肩に手を置いて、きゅ、と服を握ると、離れてくれた。
『…っ、は……、は、あ……』
「顔真っ赤だけど。…初な反応するじゃん、お前全然慣れてなんかねえよ」
『………い、つもなら…口の中、好き放題されるんだも、の……こ、んなの…反則じゃない…』
こんな、優しいの…こんな、私に愛を伝えてくるような口付けなんて。
「…大事にしてぇ奴には無理矢理なんかしないんだよ。……もうちょいしとくかァ?」
にや、としたり顔で言うその人。
ぼうっとした頭で見つめると、体から力が抜けていく。
それを簡単に支えられれば、余計に愛しくなってくる。
『……好きに、して』
「…言ったぞお前」
前髪をかき分けて額に口付けて、そのままぎゅっと瞑った瞼にまで降ってきた。
かと思えばそこからまた唇に来てくれて、軽く啄むようにチュ、チュ、と小さな音とともにキスされる。
『ん…、ッ…ふ、…ぅ…』
経験したことの無いような優しいキスに戸惑いを隠す余裕も無い。
そして彼は何度か私の唇を可愛がるように吸ってから、私の服の襟元をそっとはだけさせる。
そして狙いを定めたかと思えば、右の鎖骨付近に口付けてきた。
『え…っ、あ、ちょ…何して…ッ』
「…何。俺、とっくにお前は俺だけの主人だと思ってんだけど」
唾液を塗りつけるように舌で舐めて、キスしてまた舐めて。
首に髪が擦れてビクビクする。
腰だってとっくに限界が見えてるのに、彼の片腕が私を逃がしてくれそうにない。
『あッ…ぅ、待っ……そ、れ無理ッ、なん、か変…ッ、なんでこんなので感じ…っ、!!?…〜〜〜ッッ!!!?』
チュク、と吸い付かれるのとともに控えめに歯が当たったかと思えば、またそこを舐めてから今度は口の中にその舌が侵入してきた。
初めてこの人にこんなキスされた。
私の弱い所を探るように少しずつ味わう位置を変え、最終的には私の舌と絡めるように包み込んだり、撫でられたり。
頭がらおかしくなりそうな程に蕩けさせられて、背中を仰け反らせてその刺激から逃れようとする。
しかしそれは彼を煽るだけでしかなかったらしく、上から私を逃がさないというようにまた口付けて…あっけなく、軽くトばされた。
『…っ、…ぁ……な、ぁ…ッ♡』
「……キス、好きなんだな。すげぇそそる顔してる」