第9章 蛍石の道標
言われる言葉にビクンッ、と尻尾が振れる。
『な、…え、…ぇ…?』
「お前が俺の寝込み襲ってることくらい知ってたよ」
コト、とベッドチェストにマグカップを置いてから、撫でられる。
いや、違う、おかしい。
なんでそんなこと知って…じゃなくて、そっちよりも、なんで…
『な、…ん、で…言わなかっ…、?』
「甘えてたんじゃなかったのかよ」
『…い、や……普通そんな風になんか思わない…んじゃ』
「まあ、確かにこんなに可愛らしいやつだとは思ってなかったけどな?…けど、あんなクソみてぇな態度とってばっかの奴がんな事してたら気にもなるし、可愛らしく思っちまうだろ」
待って待って、そんな感情、持ち始めたのなんかシークレットサービスになったからで…
「シークレットサービスになってからぱったり無くなっちまったから、確信したよ」
撫で続けられる頭に、かああ、と顔が熱くなる。
バレ、てた。
「俺の意識が無いと至れり尽くせりだわ、仕事はちゃんとこなしてる上に配慮は行き届いてるわで態度だけがあれだったからな」
『普通、嫌うとこですそこ…』
「天邪鬼な奴が素直な時って、どうしようもなく可愛くなっちまうんだよ」
『…?どういう、??』
「リアが俺の事からかってんのも、嫌ってねぇからだってことくらいは分かってたってことだ」
ほら、おいで。
起こされる体を抱き寄せてぽんぽん、と背中を撫で、いい頃合になったからと今度こそマグカップを渡される。
『っ…あ、の…し、下スースーする、の…』
「下着履かせて欲しいって?」
『あ、ぅ…胸、あんま見ちゃ…っ』
「お前が手で隠してんのに見えるわけねぇだろ?」
ダメだ、熱が冷めない。
冷ましてくれない。
「…また緊張してんのか?可愛いやつ」
『ッッ、あ、あああんまり近付いちゃだ、っめ…!』
上半身をむき出しにしたまま、スラックスを履いた彼の肉体美が私をダイレクトに攻撃してくる。
「さっきもっと恥ずかしい格好してたのに?」
『り、あ死んじゃぅ、ッ』
「殺すもんかよ、こんなに可愛いのに」
ふにゅ、と簡単に指で胸をいじり始めてくれてしまうクソ上司。
感じさせるような触れ方じゃないのに、今のシチュエーションでこういうのは…非常に、拙い。
「まあ、こんな簡単に大事なとこ触らせちゃうのはいただけねぇな」
誰のせいだと…