第9章 蛍石の道標
「この首、切れてんのは?誰にやられた?」
『よ、避けなかったの』
「…ほんと、俺が大事にしとかねぇとすぐにそういうことすんだろお前」
『ん、ひっ…ぁ、』
ぺろりと舐められるとヒリヒリして、なのにこの感覚が酷く愛おしくて、よろこんでいる自分がいる。
「乱暴させやがって、ったく…あいつら相手に何された?服ボロッボロだったじゃねえか」
『……えっちぃこと』
「…今日ここで泊まりな。いい?」
『えっ、いいの?』
「いいけど、朝まで寝かせるつもりねぇから覚悟しとけよ」
え?
聞こえた言葉につい間抜けな声で聞き返す。
「お前、自分の方が強いのにあいつらにわざと襲われたろ」
権力だって立場だって、持ってるのに。
実力だって、本当は十分にあるはずなのに。
『い、やあの…』
「挙句の果てには太宰とキスとか舐めたことしてくれてっからな?ちょっとは躾が必要かと思って」
ふわ、と抱き上げられればそのまま寝室に連れていかれて、そっとそこに寝かされると大好きな香りが私を包んで、頭の中まで中也さんでいっぱいになる。
あ、枕…やばい、中也さんの枕…
タッチパネルで操作して消される照明。
そしてそれからちゅ、ちゅ、と降り注ぐ軽めのキスの雨。
そんな可愛らしいリップ音に…それに夢中になっている間に、完全変化を遂げ、耳にまでキスをされてしまえばもうこちらは出来上がる。
「俺にオシオキされたいリアちゃんはどこですかね?」
軽めにしっぽの付け根をきゅ、と握られるのに思わず彼に抱きついて、読み取ってしまった彼の思考に期待して、更に体が昂って。
『……妬い、た…?』
「…そりゃあ勿論。本当はあの場で見せつけてやりたかったくらい…しかも元彼扱いとか泣くぞ、そろそろ」
とか言いながら頭撫でてちゃ説得力無いんですけど。
なんて、満更でもない答えを返してしまえば上出来だ、と全て見透かしたかのようにして頬にキスされて。
「その上籍入れる話まで進んでるとか、我ながら行動力にあっぱれだよ。さすが俺」
『っあ、ぁ…♡』
ヂュ、と口に含んで吸われる尻尾に、頭の中まで痺れさせられる。
間違いない、この人本当に全部思い出してるんだ。
私に真尾出させて、死ぬほどこれから可愛がるつもりなんだから。
「………だから、先越されてごめん。寂しくさせて、ごめん」
『!…っ、い、いよ』