第8章 タイムリミットとクローバー
____視える未来は、二択。
どちらか選ぶ余地さえない。
ならば、流されてみるしかないだろう。
いつだってそうやって生きて、時に死んでまた生きてきた。
妖怪か、人間か。
どちらかに食われるのが、結局は私という存在の辿る末路なのだ。
だから、走って、走って。
私は結局、そんなに器が広くもなければ強い心の持ち主などではなかったらしく、人並みに怒るし、人並みに嫌にだって思うし。
人並みに、ショックだって受けてるし。
ああ、今日はすんなり着いた。
自力だけで、妖怪にだって遭遇せずに。
あとは鍵を開けさえすれば、すぐに…今度こそ、“彼”に触れられる。
なんて、ひどい女なんだろう。
「…あっれ?あれ、参謀長さんじゃね?」
「なんでこんなところにいんだよ、しかも中原さんいねえし」
「なになに、追い出されたの??遂に?」
そんな私にはこれくらいの報いは当然らしく、どう足掻いても、どうしても、運命というものは私を楽にはしてくれないそうで。
『…関係ないでしょ、早く家に入ったら?』
「いやいや、そんな連れないこと言わないでよ?俺達お前のおかげで中原さんからとばっちり食らったってのに」
顔を見れば、いつぞやに作戦違反で中也さんに呼び止められていた二人組…と、付き合いの長そうなもう一人。
「ああ、そのだっせぇ打撲中也さんにやられたの?何したんだよ」
「こいつ中原さんのお気に入りなんだよ、作戦忘れて無視ってたらすんげぇキレられて、拠点の外に連れ出されて一発ずつボコられた上にすげぇ殺気に当てられて…ありゃもう二度とごめんだわ」
「そういや最近よく一緒にいたような……って、それならこんな風に構ってると余計に怒られんじゃねえの?やめとけって、ほんと懲りねえよなお前」
「顔だけ見てりゃ綺麗なもんだし、この態度へし折ってやりたくねえ?つか、俺に対してのごめんなさいがまだだよなぁ、白縹参謀長」
うわぁ、俺知らねえよ?
なんて、一人だけ自宅へと戻っていったかと思えば、頭に銃を突きつけられる。
「ほら、怖がりもしねぇ…なんとか言えよ」
『そんなだからいつまで経っても三下なのよ、雑魚……っ、!!』
「……なんて?」
マフィアのマンション前で銃はさすがに引かなかったらしい。
が、首筋にナイフが当てられて、そこから皮膚が少し切れたようだ。
あ、やば。
嫌いなやつ。