第8章 タイムリミットとクローバー
静寂とはまさにこのことで、心地よい風が木々を軽く揺らす音に包まれて、目をまん丸にして俺から逸らせなくなるそいつを真っ直ぐ見つめる。
『……う、…えと、……え…?』
「結婚してくんない?」
『結こ、…り、リアと、??』
「他の女とするつもりねえけど俺」
テンパっている様子ではなく、考えが真っ白になってまとまらないような。
『い、いやいきなりそんな…き、記憶がせめて戻ってからって言いませんでしたっけ、中也さん』
「そう思ってたし正直未成年なのに縛り付けるような真似したくなかったし、するつもりもなかったんだけどな」
けれど、それはあくまでも俺の勝手とありがた迷惑というものだ。
「絶対的に俺に縫いとめといた方がお前のためになるんなら、すぐにでも動く覚悟は決まってる」
『い、や…いや、中也さん、貴方私がどんな奴なのか分かってないから簡単に「簡単に言ってるように見える?」!!、…あ、貴方…このまま私といても、死ぬ事になるのに?』
「そりゃあいい、お前に看取って貰えるんなら本望だよ」
『…看取るとか、死んでも嫌なんですけど。……リア、より先に死んで、ひとりにするような人となんて…一緒に、なれない』
断られている訳では無い。
怖いんだ。
信じていいのか、分からないんだ。
研究を完成させて奥の手を使わなければ、どう足掻いたって、俺がこいつよりも先にいなくなる未来は確定しているのだから。
「だから、俺の事道連れにしてくれない?……地獄の果てまでついてくよ、何回だってこうやって抱きしめてやりたいから」
まあ、大々的に挙式するのはそれこそちゃんと思い出してからにしたい所だが。
それに新婚旅行はプライベートビーチを貸し切って、心ゆくまでリアの羽を伸ばさせてやりたいなんて考えたり。
リアを取られたくないがためにまだ子供が欲しいなんて微塵も思えなかったり。
膨らむそれらを語っていく。
『そ、れで…後悔したら、殺してくれる?』
「いいよ」
『!!!』
それくらい言われること、覚悟の上だ。
「だから、もしそうなったらお前も俺の事、殺して」
『…い、いよ……そんなにいうんなら、乗ってあげる』
「違うなぁリアちゃん、俺は契約を持ちかけてるんじゃなくて、結婚して下さいって申し込んでるんだぜ?」
『!……あ、えっ、と…よろ、……ッ……喜ん、で…っ』