第8章 タイムリミットとクローバー
俺が言ったところで、説得力などあるものか。
自分でもそう思う。
そもそも記憶を失っているせいで我慢を強いてばかりになっているというのに。
尽くすどころの話じゃねえ、それをカバーできるくらいに、せめて寂しく思わないようにさせてやらなきゃならなかった。
不安にさせるべきじゃなかったんだ。
分かっていたのに、分からなかった。
この子の優しさに甘えさせられた結果がこれ。
そりゃ不満くらい溜まるだろ、それもまだ伝えてくれてるだけ恐らくマシな方だ。
「だから…ああいう可愛すぎること、しないで」
『…次来なかったらほんとに嫌なことするよ?』
「ん。肝に銘じてる」
『………死ん、じゃうから…り、あ…』
「…おいで」
ぎゅうう、とすがりつくように抱きついてきてくれるけれど、それでも泣きはしないらしい。
泣かせようとしたわけではないが、あわよくば、吐き出してくれないかとどこか期待していたせいかそれが打ち砕かれたような気分だ。
分かってる、踏み込まなくちゃ解決なんてできないって。
けれど、それを俺が滅茶苦茶にする権利は無い。
そう、無いんだ。
「俺察し悪いから…言って欲しい。お願いしていい、?」
『…嫌』
「…そっか」
どうするべきか。
そりゃまあ、四六時中こんなふうに構いっぱなしにできればそれに越したことはないのだろうが。
『………、っ…い、って…愛想、尽かされた、ら…嫌、だもん…ッ』
「!!!おまっ、…そ、んな事考えて、!!?」
察しろよとか、鈍感だから怒ってるとか、そういう事でなくて。
ただ、単純に…至極簡単なことで、怖かったのだ。
この子供は、俺という人間がどこまで許せるのかが分からなくて、怯えていたのだ。
『だ、って…っ……だって…、』
それに、記憶のない俺を相手に、それを理由に当たりたくないとさえ考えてくれてしまっていて。
「ああ…もう、……尽かすもんかよ、なんで俺がこんな子に愛想尽かしちまうの…」
背中を摩って、落ち着かせる。
そんな我慢を山ほど抱えさせている気がした。
そんな事を考えているかもしれないとさえ思わなかった。
「俺の事そんなに大事に想ってくれる子の事、見捨てるような真似絶対しねえよ……、…そんなに怖いんなら読ん____」
続きを、言えなくなる。
自分だけが記憶に存在しない、頭を読めだなんて。
そんな、酷い事