第8章 タイムリミットとクローバー
「おー、リアちゃん嬉しそう。どうしたの尻尾めっちゃ揺れてるけど」
ラウンジに戻れば、リアの様子に気が付いた反ノ塚が真っ先に反応する。
『あ、あのね!聞いて聞いて、中也さんがね!?』
アップルパイなんてもの作ってくれた奴が大福でそこまで喜ぶか。
まあ、お前はそういう部分を比較して考える奴じゃないからだろうけど。
「あ、そうだ。はいリアちゃん、これどうぞ」
『!なぁに??』
屈んでリアに手渡されるのは市販の棒付きのキャンディー。
『ど、どうしたの突然…』
「ん?ありがとねって。また好きな時に食べて」
『…いつも言うけど、いいよ?こういうの』
「持ってたお菓子だしいいでしょ。美味しかったからこれくらいもらってよ」
成程、よく分かってるらしい。
『そ、う?…も、貰ったげてもいいよ?』
「うん。ありがと…てなわけでそのパイン大福俺にも頂戴?」
『はあ!?嫌よ!中也さんはリアに作ってくれたの!り、あ、に!!』
「いいじゃん一個くらい?ねえ中也さん??」
「悪いな反ノ塚、次から先に予約しとけ。飛び入り歓迎はリア限定だから」
『そ、そそそそうよ!リア限て…り、りあげんてい…♡』
変わらず、うわぁ…と言いたそうな目でこちらを見やるここの住人達。
いやいやいや、今のは完全に正解だろ。
俺こいつの為に作ったし。
「だからまあ、うちのリアちゃんがOK出さねえなら一個たりとも許すわけにはいかねえわけだ」
「…俺も中也さんの美味しい美味しいパイン大福食べてみたいなぁ。店じゃ買えないものなのになぁ」
あからさまに哀しげな目を向けてくるそいつ、反ノ塚。
やめろ男が情けねえ。
誰得だよ手前のその顔、第一そんなことした所で釣れるやつなんかよっぽど心の綺麗な穢れなき保育園児くらいのもので__
『ま、まあ中也さんの手作りは美味しいもんね…?』
「俺フライしか食べたことないんだー…いいなぁリアちゃん、いつも中也さんの美味しい手料理食べれて。幸せなんだろうなぁああ中也さんの手料理食べれて」
『い、一個くらいならいいよ!?中也さんの手作りだから一個でもいっぱい幸せになれるよ連勝!!?』
前言撤回、ここにいたわ、余裕で釣れたわ。
えっ、待ってお前ほんとにいいのかそれで?
「わっ、マジで?ありがとリアちゃん」
『絶対美味しいからね!!』
ちょろ過ぎんだろお前