第8章 タイムリミットとクローバー
「やらねえぞ!!?やらねえからな!?」
「リアたん相変わらずすんごいねぇ、胃袋掴むってのを物理的にやってのけてるようにしか見えないや。因みに僕は君の永遠のファンだよ♡」
『ざ、残夏君に言われると照れる』
照れてる様さえ神々しい。
雪小路に関しては既に鼻血を流してノックアウト…あれは生粋の変態だから仕方ないとして。
問題は…
「僕はいぬ…僕は凜々蝶様のいぬ。そう、僕はシスコンなだけ、そう!!シスコン、すなわちそれは妹を愛するお兄ちゃん。だから決して贅沢を望んだわけでもアップルパイというものを食べたことが無いわけでもケーキを食べてこなかったわけでもないしあああああアップルパイってなんなんですか…ッッッ、」
こいつ。
このシスコンストーカー野郎。
主人と似たようなぶっ壊れ方をしているが輪にかけて酷い。
恐らく初めて口にした手料理というのもあって殊更感慨深いのだろうが、それにしてもオーバー…とも言えねえんだよなぁこのパイ食ったら。
『そ、そう君甘いの苦手だからあんまりお砂糖使ってないの…変じゃない?』
「愛しております」
「僕も愛してるよ白縹さん」
「凜々蝶!?お前そんなこと言える子だったのか!!?」
反ノ塚が素で突っ込んでるあたりガチなのだろう。
なるほど、こうして信者が増えていくわけだ。
「林檎が…生きてる、」
「お前は正しく漢の中の漢…!!!」
全員違うものが出来上がっているだなんて…それが、こんなレベルのものだなんて。
神の所業…最早神の遊戯レベルなのではなかろうか。
アップルパイというものを掌握しきった人間が初めてなせる技…というか最早こんなものを生み出したお前は創造主に違いない。
アレンジどころじゃねえだろ、渡狸のやつなんかどういうことだよ、林檎丸々使ってパイを果実で作っちまうとか何なのこいつ、なんなのこの天才。
「…お前の分は?」
『え?リア甘いものそんなにいらない』
「……り、リア?人にこんなに作ってんのに自分は何も…?」
『リアは好きな人達に食べてもらいたくて作っただけだから』
連勝の分とかついでだし。
なんて言いながら俺から離れて、調理器具の後片付けに入るリア。
が、そこで俺の元にやってくる夏目と髏々宮。
「あれ、なんでだと思う?」
「!なんで、って…」
「…リアたんねぇ、大っ嫌いなの。自分のこと」