第8章 タイムリミットとクローバー
憶測でしか無い。
しかし、そうでなければ、あの弁当に関して辻褄が合わなくなってしまう。
誰もそうとは言ってくれないが、俺が今朝目を覚ました所からあんな量の弁当を用意するだなんて無理な話でしかなくて、それからの同行をほとんど確認していた俺からすればそう思わざるを得ない事なのだ。
「…リアちゃん、ちゃんと“泣けた”?」
「……一応、泣いてはいた。そりゃまあ、そうなってもおかしくないとは思うけど」
「どれくらい泣いてた?午前中ずっととか?」
やけに、真剣に聞いてくる髏々宮。
こんなに喋っているのなんて初めて見るような気がするほど。
「い、いや、流石にそこまでは…」
「子供みたいに大声出して、泣かなかったの?」
「…何が言いたい」
「我慢してないかなって思って…中原さんに言うのは酷だろうし、リアちゃんに聞こえてたら私、多分怒られちゃうけど。なんとなく、その……カゲ様が妖館出て行ったり、他の人と仲良くしてて寂しい時でも、泣くのずっと我慢しちゃう子だから」
流石に、それは初めて聞いた。
恐らく、俺よりもリアの事を思って言ってくれたからこそなのだろうが。
夏目からは聞けなかった話だ、それも。
「ずっと笑ってない?」
「…ああ」
「そ…自殺しようとしなかった?」
ガタ、と席を立ちかける白鬼院に渡狸。
「今回はまだ未遂にもなってないよ。死にたい死にたいとは言ってたけど、こうして中原さんがシークレットサービス継続してるし」
「反ノ塚も野ばらちゃんも、多分知らないだけだと思うけど……リアちゃん、こっちから泣かせてあげないと気持ちのやり場がどこにも無くなって本当に壊れちゃ____」
火にかけていたような音や作業の音が一斉に止んで、髏々宮が言うのをやめる。
「夏目、“今どこにいるか”分かる?」
「ん〜?…色々見越してこっちに向かってきてるみたいだよ」
「そう。……ねえリアちゃん、」
とてて、といつものような表情でリアの元まで歩いていく髏々宮。
そういえば、ここの住人になったのは初めに渡狸と夏目、そしてその次に蜻蛉と髏々宮だったような。
部屋番号の小さい順に入居しているはずで、その中でリアのみが上限の部屋である五号室に入居しているから、てっきりあいつが最後だと思っていたが、もしかしてそれは違ったのではないか、なんて。
「カゲ様、帰ってくるって」