第8章 タイムリミットとクローバー
「と言ってもまあ、僕も凜々蝶様のお傍にちゃんと分身を付けておりますがね」
「お前ほんと抜け目無いよな?リア見てる気分だよ」
『中也さん今リアのこと呼んだ!!?♡』
「あーうん、話題にしてた」
『待っててね、あとここから形にしてオーブンに入れたらそっち行くから♡』
あー可愛い…
なんというか、そうか、ようやくどういうジャンルの属性なのか分かった気がする。
今までに見たことの無い人種だっただけに、分からなかったし考えるのを諦めていたのだが。
あれだ…御狐神系女子。
そうに違いない。
「彼女はその…あれだな。なんというか、見れば見るほど御狐神君にそっくりだな」
「同感だ」
「ふふ、けど僕とリアとではあまりにも違いすぎますよ。あの子は純粋で素直で、それでいて本当に綺麗な子ですし」
「?何を言っているんだ、君こそ純粋で素直なストーカーじゃあないか」
「!…そうですか」
ああ、嬉しそうなその表情さえ、似ている。
羨ましいほどにそっくりなのだが、本人達にその自覚は無いようで、更にはまだ白鬼院もそこまで分かりはしないらしい。
まあこいつはそもそもが人見知りだし悪態がキツめだから、あまりそういうところは得意じゃないからなのだろうけど。
「まあ、学校であるような噂だって大半は嫉妬した女子が白縹さんの評判を下げようと流しているものばかりだろうしな。僕は彼女は好きな部類の子だと思うから」
「噂…?」
「あれ、中原さんは知らなかったか?僕よりも詳しいだろうに、彼女のことは」
初めて聞く、リアの高校での評判とやら。
あんなに頭もよくてなんでもこなしてしまうできた奴が、そういえばそもそも大学の編入を考えているのだって、先祖返りのシステム解明のための飛び級と言えば確かに納得はするが…どうして同期のこいつらと離れてまでそう決意したのか、違和感があるといえばある。
そこまで気になるほどのものではないが。
「ああ、いやその…昨日の仕事で色々あって、記憶が無いんだよ。あいつの分だけ」
見開かれるその目は、白鬼院のものだけではない。
髏々宮に渡狸、更には御狐神の分身体でさえ、動揺しているようで。
そりゃそうか、反ノ塚や雪小路、果てはこのマンションの従業員たちでさえそうだった。
「そ、れ…白縹さんは、?」
「勿論知ってる…つうか、多分分かってたんだよ。予知で」