第8章 タイムリミットとクローバー
「り、リア…少し、話してもいいですか?」
『?作りながらでもいいなら』
それは勿論、なんて言う御狐神の表情はどこかスッキリしていて、それを見守るようにラウンジのテーブルで寛いでいる。
いや、まさかあいつがそんなにも取り乱すほどに関係を拗らせているとは誰もが思ってはいなかったから。
「その、先程あんな風に言ってしまったのですが……あのですね、」
が、どこか照れるような、言い出しづらそうな様子を見ていて俺はふと思ってしまったのだ。
あいつら、本当にそっくりじゃねえか。
『…なぁに?そう君』
「いえ、その…少し、お願いというか、烏滸がましいのですが相談というか……して欲しいことが、あっ『して欲しいこと!!?そう君が、リアに!!?何!?!?』!!い、いいのですか!?」
凄まじい食い付き。
本当に、したかったのだろう。
なんでもいいから、御狐神の為に、何か。
「その、ですね…アップルパイ、僕も作って……欲しいなと、思ってしまって」
『………ちょっと待ってて、追加で分身つかって林檎仕入れに行ってくる!』
「!?い、いえ、そこまでの事ならまた後日でも全然…!!」
これから日が落ちるのに。
それも、わざわざ材料を買うところからなんて。
俺からすれば、自分が当事者ならばそこまでせずとも次の機会にしてもらうだろうが。
あいつらは、二人揃ってちゃんとその辺は兄妹のようで。
尽くしたくて尽くしたくて、仕方がないのだろう。
『だって、そう君がリアに欲しいって言ってくれたの初めてだから』
「!!!…な、中原さん、その…」
くる、とこちらを向いて、何かを頼みたそうな目で見つめてくる御狐神。
どうしてか、見た事のある瞳をしているような気がする。
それを、その眼差しをリアと重ねると、いとも容易く何を言わんとするのか読み取れるのだ。
「…いいよ、それに許可を取るなら俺よりも俺のご主人様にだろ?」
『?な、何が??』
「買い出し行くんなら御狐神がついて行くってよ。一緒に行ってこい、そいつなら俺も安心だから」
『そ、そう君と!!?なんで!?分身なのに』
「そういう問題じゃねえんだよ、兄貴ってのは可愛い妹心配する生き物なんだ」
ほれ、と外套をその分身に着せてやり、そのまま二人で買い出しに行かせてやれば、抵抗なく…嬉しそうにして、二人で外に出かけて行った。