第8章 タイムリミットとクローバー
リアが厨房に戻ってから、御狐神を何とか励まそうとして全員がおろおろと何かフォローを入れようとする。
「み、ミケ…ま、まあこういうこともあるって。な、?お、俺らの分切り分ける時に頭数に入れればいいだけだし」
「僕は昔から冷たい男だと思われていますから…お兄ちゃんはこんなにも想っているだけなんですけどね」
「俺にはダメだわ、次頼む」
バトンを繋がれたのは雪小路。
「ええ!?い、いやでもその…昔から受け取らないって、どうしてたの?作ってくれてはいたんでしょう?」
「僕に何かを作るために怪我や手荒れの危険と立ち向かうリアなんて…ッ、そんなことになるくらいならと心を鬼にして作らせないようにしておりました…!!」
「凜々蝶ちゃんの未来が見えた気がするわ…え、えっと…あんたこそ何とかしなさいよ!?」
次に渡狸。
「お、おおお俺!!?いや、変態狐ヤローなんか変態なんだから放っといたってどうせそんなに凹みなんか…へ、凹…」
「御狐神、リアちゃんのアップルパイ食べたくないの?」
救世主髏々宮カルタ。
よくぞ聞いた、よくぞぶち込んでくれた。
「そ、それはその…」
「…僕を理由にするのならば、腹立たしいものだなそれは。食べたければ食べれば良い。それに、彼女は君の家族のようなものだろう…彼女にとってもそうなんじゃないのか?」
言い淀む御狐神に、白鬼院がそのように繋いでくれる。
確かに、従兄だと言っていた。
御狐神にとって近しい妹のような存在であれば、それこそリアだって兄のように慕っているはずで。
唯一、自身と血縁のある者の中で繋がりのある、心を許した人間なのだろうし。
「ぼ、僕は…これでも、自分可愛さに蜻蛉様と共に、あの子を独りにさせてしまった罪をもっているんです。それにこうなってしまったのだって過去の行いがあるからで、」
「そんなことでは一生白縹さんには伝わらないだろうな、君の言うその想いとやらは」
バッサリ切り捨てる白鬼院。
なんというか、そういう部分はリアに少し似ているのか、御狐神が心動かされたような表情をしているような。
「ぼ、僕がシスコンでも誤解しませんか!?不快ではありませんか!?」
「不快に思うならばどちらかと言うと僕よりも白縹さんのような気がするが…??」
被害者だったなこいつも。
それくらいは覚悟の上での交際なのだろう。