第8章 タイムリミットとクローバー
結論、俺達らしいデートというものは美味い物巡りと行き着いたところで、リアはようやく認めてくれる。
態々デートだからとそういう所に行かずとも、自然と二人でしたいことをして、それにそっとデートという名前が付くだけでいいのだと。
なんともまあこいつらしいというか、一気に気負うものがなくなったような清々しい心地にさせられる。
そして、ああ、だから好きなんだなと腑に落ちる。
記憶のある頃の俺が選んだという女に間違いはなかったらしい。
『だいたい面倒なのよね、色々考えてくれるのは嬉しいんだけど聞かれた方が何倍も嬉しいからリア』
「そういうもんなのか?」
『サプライズは嫌いじゃないけど、最終的に一緒に決めてどこかに行くなら一緒に考える方が好き。ていうか、どこ連れてかれても中也さんいるならそれで満足しちゃうから』
「お前本当にいい女だよなぁ…」
『それは知らないけど、世界で一番中也さんの事想ってる子だって自信ならあるのよ?』
それをいい女と言うのではないでしょうか??
一途かよ、イケメンかよ、一生大事にすんぞこいつ。
つかそもそも記憶が無くなってるのが分かってんのにここまで尽くそうとするなんて、それもそれで当然のことではないはずで。
…愛されてんのなぁ、俺。
こいつ以外に、恐らくそんな繋がりは俺には無いだろうに。
そう考えれば妖館の面々と同僚や親しい奴らというような関係になっているのだってリアのおかげで、プライベートにおける友人や仲間とも呼べるような存在やコミュニティがあって。
いい…すごくいい奴らだと、思う。
「…信頼度抜群だな、そりゃ。次何か注文する?」
『あ、またそうやってすぐ甘やかそうとする』
「ダメか?」
『……聞いてあげなくもないですよ?』
ふい、とテーブルの方を向いて、メニューを開いてどれを頼もうか迷い始めるリア。
反応はあれだが、これは恐らく照れ隠しというやつなのだろう。
尻尾が揺れてらっしゃるし、乗り気だし。
『中也さんはどれ食べたい?』
「え、俺?」
『だってさっきから、リアが食べたいのしか頼んでないよ』
「…じゃあ、アップルパイあたりで」
『あ、アップルパイ好き??』
「お、おう?まあ、美味いやつ食べると感動するよなあれ?」
『!!り、リア美味しいアップルパイ中也さんに作る!!!』
「えっ、作んの!!?」