第8章 タイムリミットとクローバー
指輪をちらりと見やっては照れる彼女はどこかやはり初々しくて、可愛らしい。
『…へ、変じゃないかなぁ…?』
「もう少し女の子向けのデザインでもよかったんだけどな」
『う、ううん、そうじゃなくてその…リア、が…アクセサリーなんて』
何やら、髪にリボンをつける風習しかないらしく、そういうもので着飾ることにあまり興味が無かったのだとか。
まあ、この子の事だから何か複雑な気持ちがあったのだろうと俺は考えるのだが。
「おかしくねえよ、全然。むしろもっと強請ってくれていい」
『…あの、リア自分で働いてますから』
さっきもこれだ。
そういう話にはものすごく筋を通す主義であるらしく、大変立派なのだけれどもどこか子供には荷が重すぎるような気がしてならない。
「なんなら働かなくてもいいのに、俺がいるんだから」
『中也さんといたいから組織入ったのにそれじゃなんの意味もな………お、お金あったって困らないもん!!』
「はいはい、どーどー俺大好きっ子のリアちゃんよ」
いきなりぶち込んでくるよなぁそういうの。
「だいたい、言ってももうすぐ大学編入試験だろ?そんな時期に戦争になんか巻き込まれてちゃ身体しんどいだろ」
『、…あ、ああ大学……そ、それね?あの、ちょっと試験見送ろうかなって思ってて』
「は…、?…え、見送りって」
『時期が時期だから、とりあえず暫くは組織の立て直しに専念しなきゃだし』
やけに、こっちを見ない。
素直なこいつの嘘は、見破りやすい。
待てよ、何で突然そんなこと…念願だったんじゃないのか、ずっと。
あんなに部屋にたくさん研究資料をおいておきながら。
「行けばいいじゃねえか、寧ろ行くべきだ。組織の立て直しなんか下を動かせばいいだけだよお前は」
それとも。
一呼吸置いて、リアの気にしそうなところを、つめてみる。
「…学費のこと?」
『!、…いや、あの』
「心配しなくていい…というより、本当に遠慮しなくていい。お前の生活費くらい、青鬼院から契約金だって入ってんだから全く持って問題ないんだから…携帯のこともそうだし、俺のタイミングが悪すぎたんだろうけど、好きなことちゃんとしな?」
情けなさそうな顔をさせてしまうのが、悔しかった。
俺は、約束を守る主義ではあるが。
それでも、この子にしてみれば、何もかもが不安で仕方の無いことなのだろうから。