第8章 タイムリミットとクローバー
『……何、いい加減鬱陶しいんだけど。野ばらちゃんじゃないでしょ、気安く触んないでくれる?』
「え?リアちゃん??」
『ほっといてくれたらやる気なくすか毎度の如く失敗するかするから一人にしといてってば。大体いつもこんなんなんだから今更でしょ』
「り、リアちゃん、反ノ塚じゃないわよ?」
やけに焦ったような野ばらちゃんの声。
彼女の言葉を無碍に扱うわけにはいかない…が、それならばこんな私の頭を撫でるなんて行為に及ぶ男が、この妖館のどこにいるというのだろうか。
『じゃあ何、あの変態でも帰ってきた?それだったら悪いけど死んだことにしといて、それから来世こそ絶対に面倒見ずに要望聞いてとっとと見つけ次第殺してやってくれって伝言よろしく、リア今死んでるから』
「へえ、じゃあ死人に口なしっつうことで俺が今この場でお前のこと襲っても文句ねえわけだな」
『………は、?』
聞き覚えのありすぎる声。
いや、待って、なんでこんなに早く戻ってきてるの。
というかなんで私の元に来たの。
「引きこもってばっかいるからそんなネチネチすんだ、デート行くぞデート」
『い、や…いや、ちょっといきなり何言って、』
「あ?仕事着のまま行くつもりか、もう少し色気ある服選んで行くんだよ」
そうじゃなくて。
私の手を掴んで連れて行こうとするのに頭がついていけなくて、混乱する…というより、困る。
『あ、あの…話、残夏君とまだ途中なんじゃ…』
「人との話途中にして来るわけねえだろ。待たせた侘びだとでも思っとけ」
『っ、聞いてないの!、?私、誰かと交際していいような人間じゃな「俺が一度でも認めたかよ、そんな事。大体お前が望んだ結果じゃなかったのに、なんで俺がお前のこと責めなきゃなんねえわけ?」!?、いや、普通……そうじゃ、ないでしょ…ッ』
そう、困るんだ。
だって、だって…折角私だってあきらめをつけて、手放そうって。
どうせまた馬鹿を見るって、叶わないんだって分かってるのに、馬鹿げた未来に自ら足をふみいようとして。
貴方を殺す危険まで孕む道へと、道連れにしようとしているようなものなのに。
「じゃあ俺がその普通とやらじゃないんだろ、それで解決だ」
『…、ッ、他の男に散々に使われてきた穴よっ!!そいつらの出したものだっていくらでも飲み込んできた!とっくに綺麗じゃないの、分かる!!?』