第8章 タイムリミットとクローバー
いつもの習慣…だったのだろう。
風呂から上がって、下着とインナーを身にまとった彼女の髪をドレッサーの前で乾かして、ケアをして、ブラッシングして。
こちらから持ちかけはしたのだがやけにリアは驚いていたし、俺も俺でこの行為がしっくりくるのが不思議で、しかしまあ、つまりは普段こうしていたのだろうと納得出来たため、そのまま続行するのだが。
「……ああ、そうか、だから俺お前のシークレットサービスやってたんだ」
『…!?え、い、今なんて、』
「い、いや…人魚の伝説、多分お前が俺に教えてくれたんだろ。それ思い出して、そのままシークレットサービスの契約した……のは、なんとなくだけど思い出した」
あまりにも、この子のその姿が綺麗で、神聖で。
頭からこびりついて離れなかったから。
『……べ、別に思い出したからって続けなきゃいけない義務とか無いからね?』
「阿呆か、それで俺が逃げたらお前蜻蛉と籍入れるんだろが」
『…好きにして』
「だから続行。いいか?辞めるつもりねえし…お前のこと一人にするわけねえだろ」
意外だと言うような反応はされなかった。
寧ろ満更でもないような、そんな表情。
こうして見てると本当に年相応の子供にしか見えねえのに。
「また何か思い出したような気がしたら聞いてみるから確認よろしく、お姫さん」
『お、女慣れしてる呼び方嫌い』
「してねえっての。まあ、嫌ならやめるけど」
『…本気でそんな風に思ってるんなら、やじゃないのよ?』
「じゃあ間違ってねえな」
『余裕そうでムカつく…』
どの道かよ。
余裕っつうか、幸せなだけなんだけど。
服を着せて、それから手を引いて、ラウンジまでエスコートして。
おぶってもよかったのだが、二号と呼称する俺もどきの人形を抱っこすると聞かないため、仕方がなく諦めることにした。
「おかえり二人とも、仲直り出来た〜?」
『残夏君、別にリア中也さんと喧嘩してないよ?』
「遠慮は物凄くしてたみたいだけどねぇ?」
『してない』
「…まあいいや、そういうことで。それで?僕に用事があるんでしょ」
読まれていたか、流石に。
「用事っていうか…頼みがあって。……リアの事、聞きてぇんだけど」
本人が隣にいるのに、なんて酷な返事は帰ってこずに、いいよと軽く返される。
そのままリアを二号室の二人に預け、場所を移す。