第8章 タイムリミットとクローバー
立体映像を使用していることなど悟られていたようで、姿を隠していたはずの社長に谷崎君、そして国木田君。
更にあちら側の黒蜥蜴の三人に森さんにまで、彼女の分身が武器を向けている。
「…リアちゃん?どういう事かなこれ、聞いてないんだけど」
『妾が部下に属しているからと気を緩めるでないヘナチョコ首領めが、其方、妾にどれだけ借りがあるか思い出してみろ』
「……失礼致しました。なんなりと」
あの森さんが、跪く。
これは由々しき事態だ。
それに合わせてあちらの三人も膝をつく。
そしてこちらはと言えば。
「白縹殿、どうして貴君のような方が…」
『異論があるなら今ここで妾を殺しておきなさい?恩を返せなんてことは言わないから、失せるかどうにかしてくれないかしら』
こっちだって好きでこんなまどろっこしいことしないわよ。
言い切った彼女から発せられる圧は凄まじく、流石の社長も膝を着いた。
加えて、国木田君に谷崎君も。
そしてそれに準じて私も膝をつこうとするのだが。
『……貴方が私に傅くなんて、有り得ない行為だわ。やめてちょうだい』
「…判断基準、おかしいよね君」
『私が全てよ』
いただけなかったらしい。
とめられてしまった。
『…罰する者がいないのなら、私がその役を引き受ければいい話。違いますか、両方とも』
「…異論なし」
「ま、待ってくれ白縹!お前はポートマフィアの作戦参謀だろう!!?」
『どこの組織に、所属組織の首領を跪かせる部下がいるんですか?国木田さん』
「!!?…し、かし…」
『私はここにいる太宰治、それから…私のシークレットサービスを除いて、規約違反があるならばいつでも殺す準備が整っています』
血縁者の末端因子までね。
言い切ったところで並々ならぬオーラを感じたのは全員そうであるらしい。
『武装探偵社側に異論は?…福沢さん』
「…貴君にならば、この命預けても構わぬ」
「社長!!?」
「ただし、もしも裏切りがあり、構成員に危害を加えるならば…それなりにこちらを説得してからにしていただきたい」
『それは勿論です。私の事をお疑いですか?』
「…いえ、お変わりのないようで安心しました」
武器を下ろし、分身を消して、目の前の九尾の少女はどちらの頭にでもなく、私に向けて膝をつく。
『…私の本題はここからで…お願いが、あります』
