第8章 タイムリミットとクローバー
所定の時間、記載した場所で、ポートマフィアの首領・森鴎外が部下を三人連れて現れる。
こちらは自分を含め、国木田君と社長。
そして異能で隠れた谷崎君。
ああ、それにしてもやる気が出ないな。
どうなるかが手に取るようにわかる、だって相手が森さんだもの。
「ようこそ首領」
「四年ぶりだねぇ、私があげた外套はまだ使っているかい?」
「もちろん……焼きました」
忠誠心などとっくのとうに失っていることを分かった上でおちょくっている…いや、今のは軽い挨拶だろう。
私たちはこれくらいで丁度いい。
と、そこでこちらの社長の声が響く。
「ポートマフィア首領、森 鴎外殿」
「…武装探偵社社長、福沢 諭吉殿」
身構える国木田君に、あちらの黒蜥蜴の三人。
一触即発のこの場の空気は重々しい。
ピリピリしていてあまり好きではないな。
が、そこで社長はこちらの話の本題に入り、森さんへ直接同盟関係…ならぬ、停戦協定を持ちかけた。
発案者はといえば勿論敦くんだし、私はそもそも相手をよく知る身なので反対であるが、社長も国木田君も勿論頭を悩ませて。
しかし、社長は結果的にそれを受け入れた。
なのでこのような会合が成立している。
のだが。
停戦協定など、口約束で同盟を結んだところでいくらでも破棄できるし、裏切れる。
完全なる相互理解が得られるような間柄でもない限りそんなものを心配する必要は無いのだろうが、あまりにも組織間の軋轢が大きい。
損をするのは停戦協定を信じていた方。
この協定には、それを罰する者が存在しない。
森さんに論理的に諭され、やはりこの場でどうにかするのは不可能か、と考えていたところで、社長が腰に携えていた刀を手に取る。
「それでは、構成員同士の確執を今、この場で精算するというのは?」
「「!!」」
それを悟って止めに入ろうとする銀ちゃんと、ファージャケットを着た青年の武器を瞬時に斬り、森さんの喉元に切っ先を向ける。
しかしそこは歴戦の旧友とでも呼べば聞こえはいいだろうか。
森さんもまた、彼の獲物であるメスを社長の喉に当てていた。
これでは、会合はやはり形だけのもの。
やるならば別プランで動かなくてはならない……そう、ふんでいたのだが。
『ならばその審判、妾が引き受けよう』
姿のないはずの少女の声。
ああ、そうか、その手があった。
白縹 リア…
