第8章 タイムリミットとクローバー
きゃっきゃうふふと俺のぬいぐるみを話題になかよしこよししてやがったこいつらに収拾をつけたのは、首領からの指示だった。
昨日の件で死んだ部下達の照合が完了していたらしく、死体袋を並べてある所に最終確認を行いに行くこととなる。
「…あれだったら、お前こいつと喋ってていいけど?」
『……置いてくつもり?』
「あーはいはい、そのまま乗ってろ」
可愛い奴め。
昨日に比べれば立ち直ってくれてはいるようだが。
俺が泣きかけたのがいけなかったな、やっぱり。
安置所へと赴けばそこには既に首領もいて、そのまま全員のデータと遺体の顔や身につけているものなどを照らし合わせ、最終確認を行っていく。
リアを降ろしはするが、遺体に触れさせることはせず、悟ることだけは許さなかった。
本来、見なくていいはずのものだから。
人間の死に様なんて。
見たくもないだろう、お前も。
一人ずつ、確認して、黙祷して。
最後に全構成員に向けて脱帽し、頭を下げ、安らかな眠りを祈る。
「…中也君。リアちゃんも、お疲れ様」
「……太宰の木偶が呪いを阻止…それに、うちのリアのプランがなければこの十倍は被害が出ていたでしょう」
「そうだね…リアちゃんにも酷なことをした。でもありがとう、参謀長なんて引き受けてくれて」
『…お礼は中也さんの有給休暇で』
「おや、思ってたより元気そう…うん、増やしとくよ。ありがとうね」
この人にだって、悔しい部分はあるだろうに。
それを思って、無邪気にもいつものような返しをしたのだろうか、この最年長の子供様は。
だとしたら、なるほど…知らないだけで、相当助けて貰ってんな、色んな奴が。
と、そこに、コツ、と足音が響いて扉が開き、誰かが入ってくる。
するとその刹那、リアが俺の腕を抱きしめているのに力が入って、そちらを向く。
「おや、紅葉君」
「…姐さん」
ペコリと、五大幹部が一人、探偵社に捕虜として捕らわれていた尾崎紅葉に向けて会釈したリアににこ、と姐さんは微笑んで頭を撫でる。
「役立たずの捕虜を置いていても世話代が嵩むと、追い出されたついでに使番まで押し付けられたわ…探偵社の社長から、茶会の誘いだそうじゃ」
ぴら、と見せられる封筒。
そしてそれを首領が受け取ろうとしたところで、少女の声がこだまする。
____や、だ…っ
「!…え、?リアちゃん?」
