第7章 燐灰石の秘め事
『ねえねえ中也さん、リアにして欲しいことなぁい?』
「え?俺に好き放題世話焼かれててほしい」
『そういうのじゃないんですけど…ていうかもう十分じゃ、』
いや、全然?
風呂上がりに髪の手入れをしながら、やけに俺にその質問を繰り返す彼女にそろそろ違和感を感じ始める。
「…また何か考え込んでるか?言ってみ、なんでもござれだ」
『別に考え込んでなんかないです』
ダウトなんだよなその反応は。
問題はここからどうするかなんだが。
…いや待て、逆に考えろ、要するに何かしてくれと頼めばいいわけだろ?
「じゃあ…どうしようか、して欲しいことなぁ」
ぱぁ、とわかりやすく好反応を示すリア。
そんなにか、そんなに我慢させてたのか。
こいつ悟りの能力なかったら完全にダメ男ホイホイだぞ。
「…んじゃ、明日弁当作って欲しい」
『!うん、分かっ…、?そ、それだけ??』
「それだけって、作り置きもねえのに弁当なんかご馳走だぞ?」
『……ほ、ほかには?』
「俺も料理くらいしかしてねえのに他もって言うんなら、俺もそれなりにさせてもらうことにな『分かった、お弁当ね!?』よぉしいい子だ」
もう少しくらい、肩の力抜いてくれてもいいのに。
だがそれをこの子に言うと、恐らくそれさえ自己責任として捉えられてしまうだろうから。
どうにか、していけたらいいのだが。
「リア、お前さ…憶測で悪いんだけど、親に直接育てられた記憶、無いのか?」
『…?うん、だってリア、先祖返りだもん』
「その…飯用意するとか、服選ぶとか、それこそ着せてやったり風呂入ったり…お前、えらく特別みたいにして俺に有難がってくれてるだろ?いつも」
なんとなく、この子供がそういう心持ちになったルーツが見えたような気がした。
薄々いつも感じていたことではあるが。
『特別だよ』
「…そんなに、大層なことじゃないから恩とか感じなくていいからな?返さなきゃいけないようなもんじゃなくて…あれだ。これまでお前が受けてこなかった分だとでも思ってくれればいいから」
『……どういう、?』
「大事にしたい家族には、人によって形は違うだろうけど、それくらいしてやっておかしくねえの。執事だ使用人だなんだってお前は言うけど…親だと思ってくれて構わねえよって、言っとこうと思って」
ピタリと、リアが言葉を失って静止した。