第7章 燐灰石の秘め事
食事が終われば少しゆっくりしてから風呂に…というところなのだが、流石にそればかりはと聞きかねていたところ、彼女からの問いで一瞬にして心を決めることとなった。
お風呂は…入れてくれないの?
言い方からして、洗ってくれと言っている。
それは勿論、人魚リア様をだ。
喜んでと即答したはいいものの、彼女の方からまた強請ってきてくれるとは。
ちゃんと下心さんはしまっておきますんで安心してくださいね俺の天使様。
折角今日は働いたのだからと、大浴場を片方一時的に貸し切らせてもらうことにして、そちらに入る。
『尾鰭まで伸ばせるぅ〜♪』
「流石に部屋のじゃ無理あるもんなぁ…にしても広い広い」
『中也さんに好き放題抱きつけるお風呂…♡』
「リアちゃん、素直なのは可愛いけどのぼせないようにな??」
『か、わいいって言われた…、』
トドメさしたかこれは。
きゅぅ、と鳴いてバタンキュー。
あー可愛。
「今日は人魚姫様のために特別アイテムをご用意しましたが」
『…特別アイテム?』
「スポンジ」
『すぽんじ』
「アヒル」
『あひる…』
「俺」
『ちゅうやさん♡♡』
わっかりやす…
言わずもがな、鱗を丁寧に磨いてやるためのボディ用のスポンジだ。
角が使えて見た目も可愛らしい星型だぞ、星型。
そこまでお気に召さなかったというか、こだわりはなかったようだが。
そして俺が自身を洗っている最中の遊び相手ことあひる。
確かにこちらは賭けのような感覚で一か八かで持ってきた。
あった方が退屈しないかなと。
結果的にこいつにとって俺がいる限り、風呂場で退屈になるなどということは有り得なかったご様子だが。
そして最終兵器、俺。
どれだけ気分を盛り下げてしまおうと、最後にこれを言っておけばすぐに機嫌が治るのがうちの純粋リアちゃんである。
決してちょろいわけではない、愛に溢れているのだきっと…ちょろいわけじゃあない。
「…おもちゃよかもっと大人っぽいのの方が良かったか、そういやお前前世までの記憶もあるんだもんな」
『何??』
「ベタだがバラ風呂とか好きか?」
『は、入った事無い…!』
おっと瞳が輝き始めた。
そうか、そっち方面か、そりゃそうだよな立派なレディーになんという御無礼を。
「その方面のスパにでもまた行こうか、それこそ抗争が終わってから」
嬉しそうだし。