第7章 燐灰石の秘め事
『………………あの、中也さん』
「なに?姫さん」
『り、リアその…いいよって、言った…んです、けど』
目の前の少女が困惑するのも無理はないだろう。
あの流れでああ言われたのに許可を出して、それを覚悟するだなんて至極真っ当で健全な思考回路をしている。
が、俺はその少女の肌や唇を堪能するだけ堪能した後、致しはせずに部屋着を着せて、体のマッサージをし、クールダウンさせながら合間に手足のネイルケアをして、挙句食事の用意をしているのだ。
困惑しない方がおかしな話。
「おう、ありがとう」
『…し、シたかったんじゃ……??』
「それはそうだけど、どうせならたっぷり好きなだけ好きなことさせてもらおうと思って」
『なんでそれでリアのお世話ばっかりするの頭おかしいんじゃないですかほんと!!?』
半泣きになりながら猛抗議される。
そんなにか。
だが先にネイルケアをしていたのは効果的だったようで、美容液を染み込ませているのを無碍にするのかと困ったような表情をしてみせれば、このちょろさに輪をかけてちょろい姫さんはすぐに手足を使うのをやめてくれる。
覚えておこう。
「頭おかしいっつっても、お前の従兄も似たようなもんだと思うけど?」
『基準のあれが既に頭ぶっ飛んでるから言ってんのよ!!』
「御狐神が聞いたら泣くぞそれ」
というか遂にあれ扱いか、遂に。
「…リアは嫌か?俺が好き放題リアの世話するの」
『い、!?…い、いい…嫌とか、じゃないけどあの、…』
押せばいける。
既に、早々に、最早。
そう確信を持った。
『……そういう、のはやだ』
「…好きなだけくっ付いてていいけど?」
『えっ、本当…??』
出ましたちょろ子様、待ってました。
「いいって、いつでもくっ付いてて。俺がいいって言わなきゃくっつきに来てくれねえの?待ってんだけどいつでも」
『…抱っこ?』
「お易い御用ですね?」
『勝手にいっぱいチューするかも』
「執事冥利に尽きるもんだなそりゃ」
『我ながらいつも思うけど鬱陶しくないの?』
「いてくれねえと落ち着かねえっての。落ち着かなさすぎて離れらんねぇんだから」
ほへぇ、と新事実を知ったような純粋無垢な子供の瞳で俺を見つめるリア。
やべえ、ろくでもねえこと植え付けてる悪い大人の気分になってきた。
『…今日フレンチ!』
「任せとけ」