第7章 燐灰石の秘め事
前までしっかり止められてしまった上に異能で絶対に開けられないようにされてしまった、ぶかぶかの上司様の外套。
正直に言って暑苦しい。
「!?し、白縹さんどうしてこんな所に…貴女は保護対象だったはずじゃ、」
ばたばたとこちらに気づいて駆け寄ってくる樋口さんに心配される。
この人も中々過保護だよなぁ、もしかして芥川さんに何か言われてるのかしら。
『白縹さんって…私樋口さんより歳下ですけど』
「準幹部じゃないですか」
『え…、と、それが…?』
えっ、と固まられてしまう。
あれ、何かおかしなこと言ったかしら。
するとそこについてきた立原君が、樋口さんに無駄っすよ、とため息。
「この子、年相応の扱いされた方が嬉しいらしいんで」
『立原君、おんぶ』
「中也さん怖いからダメだ」
『けち。中也さんのけち』
「全部俺かお前ら」
えええ、と困惑する樋口さん。
いい人なのよねえこの人…しかもすんごい芥川さん大好きな。
『リアちゃんって呼んでくれたらお友達よ?』
「リアちゃん…!!!」
「「『早、』」」
思ってた以上に食いつかれた。
えっ、何この人可愛い。
「私もリアちゃんのこと甘やかしたくって…、なのに仕事は行き違いになってばかりだわ、中也さんのガードが硬すぎるわ…!」
「おい、手前も俺か」
『このわんわんならリアが黙らせるから大丈夫よ。何女の人にまで妬いて…!?ちょ、た、立原君ダメよ!?リアの中也さんとったらめ!!ダメだからね!!?』
「「ブーメランって知ってるかお前???」」
中也さんと立原君に同時に突っ込まれた。
いや、だってリアより立原君の方が近かったもん今!
絶対近かった!!
ぎゅううう、と中也さんの腕にひっついてじいい、と威嚇する。
「…あー、それじゃあ中也さん、俺らこれから“回収”業務にあたりますんで」
その言葉が指すのは、今回の件で亡くなった構成員達の遺体のこと。
『…地図貸して』
「え?」
いいから、と立原君からヨコハマの地図を拝借し、遺体の位置と正確な人数を悟り、印をつけていく。
『はい、大まかな場所と、人数。散らばってるから闇雲に当たってちゃ終わんないでしょ』
「……お前、態々悟って…?」
『人でなしとか思わないでね?…割り切らなきゃ、進めないでしょ』
人より多くの死を見て、経験したからこその意見だが。