第7章 燐灰石の秘め事
ぽかん、と口を開いた彼は、え、と間抜けな声を漏らして、反論しなくなる。
『だからっ、嫁に来いとか言われたってそれは無理!分かってるくせしてまだ私にんな事言うくらい寂しいんだったら、一緒にいてやるっつってんの!!五階のシークレットサービス用の部屋、中也さん使わないから空き部屋なのよ!』
「いやいやいや、リア?あの君、何言ってるか分かって『家族みたいなもんでしょうが…!!』!!!」
ふと、彼の方から狼狽えたような様子がしなくなったのでそちらを見てみると、口元を手で覆って、やけにこちらを見てくれなくなる。
『…、?何、どうしたのマーク君』
「……あのさ、リアちゃんほんと…いきなり男前になるよね…なるほど、考えたもんだ。確かにそれなら、僕は君をここで足止めする理由を完全に失うことになる」
『ならよかった、とっととそこどいて』
「辛辣!!?もうちょっとくらい浸らせてくれても良くない!?」
『書類用意しといたげるから、また妖館に訪ねてきたらいいわ。生活に必要なものならこっちで全部揃えたげるから、別荘だとでも思ってなさい』
「………ねえ、惚れていい?」
『は?惚れてなかったくせに嫁にするとかほざいてたの?』
「あ〜、…っ…はい、あの…気を付けて、ね」
ずるずる、と壁に背を預けてへたり込むその人は耳の先まで真っ赤になっている。
見たか、これがハニートラップだ(多分違う)。
じゃあね、と言う代わりにぽんぽん、と彼の頭を撫でてから、先を急いでその場を後にした。
「…かっこい、」
____
「海音ちゃん、見て!僕にも力、あったみたい!」
『…力?何が…!』
「驚いた!?異能力っていうんだってさ、先祖返りとはまた違うみたいだけど…海音ちゃんとお揃いみたいでかっこよくなぁい?」
『……一緒、?こんなのと?』
「かっこいいじゃん?」
『…あ、っそ』
____
彼にしてはなんでもなかったのであろう、そんな言葉が、私にとってどれだけ嬉しかったことか。
無理矢理こじつけて、私と一緒だなんて言って、無邪気に笑う彼に…私がどれだけ救われたか。
彼の家族に、どんなによくしてもらったか。
迎えに来んのが遅いのよ…何もかも、起こってしまった後じゃ、なんにもしてあげられないじゃない。
私だって、貴方のこと、ちゃんと人として大好きなんだから。
『どっちが』