第7章 燐灰石の秘め事
大気中の水素を操って凍らせ、それを足場にして空中へと駆け上がっていく。
組合の拠点はステルスを実装しているため見えないので、周りからしてみればどうして空中へ向かっているのか分からないのだろうし、その実中也さんでさえもが驚いているほどだ。
まあ、彼の場合は私の力を知らなかったというのもあるのだろうけれど。
悟りの力を持つ私にとって、ステルス機能などあってないようなもの。
なので、もちろんそれを察知したあちら側から銃撃があったところで。
「…っ、!!?た、弾は!?撃ったはずだ、どこに消えた!!?」
射撃班の場所へ行き、ガラスを割って中に無理やり侵入する。
『ごっめん、私に狙撃とか不意打ちとか、意味無いんだわ』
「!!!構えーーー」
大ぶりの槍で敵の武器を根こそぎ切り捌いて、柄で意識を削いでいく。
分身を作るまでもない。
『全部“視えてる”し、“聴こえてる”もの』
まあ、ここでひと休憩する訳にもいかない。
私はここから、とっとと人形を…
気配を探ったところで、中島さんの居場所が判明する。
どうやら鍵付きの部屋に閉じ込められているらしい。
異能で完全変化をしてぶち壊せばいいものの、それをしないのは恐らく制御がまだしきれないからなのだろうが。
「…っととぉ?これはこれは…かわいいご来客だ。遂に僕のお嫁に来るつもりになった?」
と、ここで聞き覚えのありすぎる声が響く。
廊下を走っているところの角でばったり、ぶつかりそうになってよろけた所を支えてくれたのがその人。
なのだが。
『はっ、冗談もそこまでいくとキツイわよマーク君?私が、なんで中也さん以外の男と一緒になんなきゃならないわけ』
「あらま、開き直っちゃった…へえ、いきいきしてんねぇリア?」
何故か、嬉しそうにしている変態野郎。
おかしいな、私はこの人の申し出をこんなにもバッサリ斬り捨てているはずなのに。
『悪いけど、私急いでるから退いてくんない?』
「ごっめん、それちょっと無理。僕これでも組合の人間だから」
『…お願い』
「嫌だね、そんなに通りたいなら倒してけばいい話でしょ」
簡単に言うけど。
私が貴方にそんなことできるとでも思ってるのかしら。
思ってないから、言えるのよね。
『……っ、そんなに一緒にいたいんなら、妖館に住めばいいわ!!!好きなだけ近くにいてやるわよ!!!』