第7章 燐灰石の秘め事
目が覚めたのは、鳴り響いた警報…と言うよりは、中也さんの身体がそれに反応して臨戦態勢に入ろうとしたのを悟ってから。
大規模テロの時間が来たらしい。
探偵社の方では国木田さんが呪いを発症する未来は見えていたので、その点も太宰さんに伝えてはあるから安心だが…あの人外に出るもんな、あっちもあっちで動かさなきゃか。
「リア、俺は指揮執りに出るけどお前は…」
時間帯を気にしてか、着いてこいとは言い難い様子。
けれどそんなことをしていて万が一の事があれば、私が今度こそ何も納得できないなんてことこの人にももう分かりきっているわけで。
『…置いてくつもり?』
「……離れんなよ、怪我したら仕置だ」
『!、…ん』
起き上がって、差し出された手を握ってそのまま走ってついていく。
外では、うちの構成員…よりも一般市民の呪いの発症が酷いらしく、いよいよ慌ただしくなってきた。
まずは拠点の防衛が最優先。
銃撃音や車の倒壊する音が鳴り止まない。
私の場合は鎮静作用を上手くあしらえば呪いを無効化することが可能なので、まあまあ有利といえば有利なのだろうが。
『…!中也さ、ッ、左!!』
「!!」
意識を持たずして飛んでくる無機物達を見切るには、常に全開で予知能力を使わなければならない。
気付きさえすれば、そちらは彼の能力でカバーしてもらえる。
なるほど、これは寝ていて本当に正解だったらしい。
Qちゃんの人形の位置を悟ってみてもまだ組合の拠点の中だ。
長丁場になるなぁ…
こうなれば、こっちから奪いに行った方が早いかもしれない。
『…中也さん!ここ任せていい!?』
「ああ!!?…っておい、任せるっておまっ……どこ行くつもりだ!?」
『このまんまじゃ拉致があかなくなってきたから、とっとと人形取りに行く!!』
「そりゃあ探偵社側がなんとかするっつって『私が行ったらこっちの被害を抑えられる!』…お前、それで戻ってこなかったらただじゃおかねえぞ」
ぐい、と体を引かれて、ちゃんと目を合わせて、問う。
『…狐は化かすのが得意なのよ?ちゃんと愛のレーダー付けててよね』
ごそ、と彼のベストのポケットにしまわれていたそれを自身の服に突っ込んで、クロスタイを引っ張って無理矢理屈ませて、口付ける。
「ッ、!!!?」
『……んじゃ、行ってくるクソ幹部!』
「てめっ、…後で報告書!」