第7章 燐灰石の秘め事
「いやぁ…分身のままぐっすりですね」
「そりゃあれからもう何日経ってるって話だからね。寝てても維持してるとかすごいよほんとに」
「まさかお前が自殺停止宣言をするとはな」
「このままだと本当に衰弱して意識なくなるまで私から離れたがらないからこの子は……自分が一番危険なくせにね」
〜〜〜〜〜
『…ん、……んん』
「……リアちゃん、体調悪いなら自己申告するんだぞ?」
『リア元気だもん…んにゃ、』
「…その書類と見積書、こっち寄越せ。お前ちょっと寝ろ、見てて危なっかしいわ」
『お仕事、』
「外でバリバリ働いてる奴が俺の仕事まで手伝おうとすんじゃねえよ馬鹿、膝枕してやっから寝とけ。よく分かんねぇけど、見張りの分身だけでも三十体くらいは動かしてんだろ?大丈夫そうなら寝てろって」
ふわふわする思考の中で撫でられると余計に眠たくなってくる。
眠たいなんて感覚が嬉しいのは私くらいのものなんだろうけど。
『……でも、大丈夫じゃないよ、?』
「…そんなに作戦違反だらけなのか?」
『ん…リアじゃ説得力ないから』
「立場が分かってねぇ奴が多いらしいなぁ、どうやら。…そんな奴らのためにお前が体張らなくていいんだよ、首領から直接無線にもっぺん命令してもらえばいい話だろ?」
本気でするつもりだこの人。
自分の組織のトップを、そんなことのために使う気だ。
『い、やいや…それなら中也さんが、』
「じゃあ俺が流すわ」
なんて言いながらとっととパソコンでその種のメールを作り上げ、一斉送信。
自身の管轄の舞台だけでなく、今日ヨコハマにいる構成員の全員に送られる。
『…それでも聞かなかったら?』
「自力で何とかできんだろ」
『放っとくの?』
「そんなことのためにお前ばっかりしんどい思いする意味が分からねえな俺には」
なんて言いながら、私を横抱きにしてソファーまで運び、本当に膝枕をしてくれてしまう。
あ、この感じ好き。
中也さんが甘やかしてくれてるの。
「なんなら三日くらい寝ちまいな」
『…三日中也さん抜きとか死ぬ』
「それは困るな、んじゃ夕方くらいに起きて」
『………うん、いいよ』
へら、と笑って、彼と約束する。
適度に力を抜くと。
作っていた分身達を、一体残して自身の力に還元し、中也さんのにおいに包まれながら、彼の手に撫でられて、眠りについた。