第7章 燐灰石の秘め事
場所は移って、クレープを食べさせられている会議室。
『……ごめん中也さん、謝らなきゃいけないかも』
「?なんだよ突然」
『いや、分身で太宰さんと接触して…ちょっと甘やかしてたらさっきちゅーされたから』
「あああ!!?」
あー、やっぱり言って正解だった。
後々モヤモヤするのも嫌だし。
『ごめんなさい、下心とかそういうあれじゃなかったから受け入れたんだけど…黙ってるのもあれかと思って』
「!!…い、いや…黙っててもいいのにそんな事、言いにくいなら」
『?不倫してるみたいで嫌じゃない、そういうの』
そのつもりは私にも、そして相手にも一切ないということから、伝えていく。
言葉にしにくい関係性だし、特別な情だけれど。
「いや、まあ…それは嬉しいけどだな?……どうしたよ」
『…あの人、リアと同じなの。心の奥底で、生まれてからずっとずっと独りぼっちなの』
「………お前が、嫌じゃねえんなら…別に、いい。よっぽどの事態なんだろ?お前らにとっちゃ」
『え、…怒んないの、?』
「怒るも何も、俺じゃ力になれねえ案件だろうからな。まああんまり好まねえ内容ではあるけど、お前が辛い時に抱えきれなくなるよかよっぽどいい」
なでなで。
ずっとそんな調子で、私の事甘やかしてる…気がする。
無理してないか聞いてみても、無理とかいう類のものではないらしくて。
「…お前らもお前らで、どっちが欠けてもいけねぇんだろ」
『…私は、中也さんいるからまだマシだけど』
あの人にはそれがないから。
良くしてくれる人も勿論いるけれど、それで生きていけるならば苦労も苦悩もしないのだ。
そもそも、頭や心の作りからして常人のそれとは違うのだから。
本当は私を自分の手元に置いてしまいたいと…暫く置かれていたことさえあるなんてこと、いったい何度あった事だろうか。
あの人だって、その実愛に飢えた人。
恋愛に限らず、あらゆる情に。
友人なんてものさえ、一人二人しか思い当たらない。
そこにたまたま、私がいるだけの。
失うことの恐ろしさだって、身に染みて経験したばかりの人。
『まあ、怒ってないなら…良く、はないんだろうけど、いいや。……“こっち”にしなくていいの、?キス』
「クレープ食べきってからにしろよ、リア用の量なんだ。じゃねえと、離してやれなくなっちまうから」
こっちもこっちか。