第7章 燐灰石の秘め事
とりあえずそこから探偵社へ戻るらしいので、ついでに私が使っていた車を国木田さんが運転していくことになる。
が、探偵社の近くの駐車場にとめたはいいものの、何故だかその国木田さんに言われて探偵社の事務所まで同行することになった。
聞いた話によると、中島さんが組合の拠点に囚われているらしいのだが…まあ、私は知っている話だ。
『…あの、さっきから言ってますけど…一応、敵組織の人間ですよ?』
「構わん、社長が許可している」
『福沢さんか…本当に心配だなぁこの組織』
うちもうちで大概あれだけれど。
『…私がここに来たら、真っ先にうちの幹部さんを奪還するかもしれないって考えませんでした?』
「それならいいよ。少し頼まれて欲しかったところだからそこは」
『?というと、…えっと??』
「いやね?捕虜にしたはいいけどポートマフィア側は正直なんとでも立て直せそうじゃない?…ねえ、参謀長さん」
気付いたところで、唇に這う彼の親指に、ビク、と身体が硬直する。
ああ、この人ってこういう人だった。
組織のためならば、勝つためならば。
『…言っときますけど、この体は分身ですよ』
「その方が中也の邪魔も入らずに済むから助かるよ。まあそっち側の不利になるような情報を与えろなんて事は言わないし、必要ないけれどね?協力してくれないかなと思って」
『内容によります…それに、お願いする人の態度じゃないですよこれ』
に、と笑って、彼はそのまま私の頬に口付ける。
「え、…えっ!?だ、太宰さん!!?」
「おま、ッ」
『…、ン…くすぐったい、んですけど、……あの、っ』
「ちょっとむかついたから八つ当たり」
なんて軽く言いながら、鎖骨まで降りてくる彼のキスに、震える。
待ってよ、こんなにこの分身とは感覚を共有してるんだから、そんな事されたらこっちの身体だってただじゃ済まない。
『ヒ、ッ…ぁ、…』
「…まだ抵抗しないんだ?したらいいのに」
シャツのボタンを外せば見える、中也さんに付けられていた鬱血痕。
それを舐めて、上書きするように触れるだけのキスをして。
『……っ、消さ、ないで…』
「!…ぷっ、こんな濃く付けられてるの消せないよ。安心しな」
それから軽く、ほんの一瞬唇に触れられて。
あ、多分これ拒まなきゃいけなかったんだな、なんて他人事みたいに考えた。