第7章 燐灰石の秘め事
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拠点に到着し、分身を十数体作って各配備ポジションの監視にあたらせ、私自身は中也さんにおぶられたまま待機場所である一つの出入口付近の小会議室へと向かっていく。
「!おはようございます中也さん」
「おう、はよ」
が、すれ違って外へ出ようとする構成員二人。
それを見つけて、中也さんは彼らを引き止める。
「…おい、手前ら」
「!?は、はい、?」
そう、二人なのだ。
「通達があった上に、わざわざうちの参謀長が口頭説明しに回ったろ。今日は三人体制だって…それに捕縛具も装備していけ」
「そんな、大丈夫でしょうそこまでしなくても。それに元々は集団警備だったのをわざわざ散らして配置するからそんなことになるんですって」
「そうそう、これでもこいつ、元々作戦案提出してた時期だってあるくらいで…」
「死にたくなけりゃ、聞いとけっつってんだ。二度は言わせんなよ?」
途端に響く、驚く程に低くなる声。
それにひっ、と短く声をあげた二人は、中也さんの…珍しく部下に向けられるさっき紛いのオーラにあてられたのか、動けなくなったらしい。
「手前らが作戦案出して、それが今回通ってねえなら首領の判断でこうなってる。それも通達書に記載されてたろ…これは作戦参謀長、並びに“準幹部命令”だ。背く権利は準幹部が一人しかいない現状、幹部格未満の構成員には無いはずだが」
私を床に降ろしたかと思えば少し離れて耳塞いでろ、見るな。と耳打ちするので、何故かと疑問に思いつつも見られたくはないのだろうと、言われた通りにする。
するとふわりと撫でられて、彼の気配が離れていって。
暫く一人でなにも感じ取らないよう集中していると、唐突に足に地響きが響き、砂埃のようなにおいが鼻を掠める。
あまりにも突然でびくつくのだけれど、彼がまだいいぞと言ってくれないのでそのまま、そこで座り込んで、待つ。
もうすぐ中也さんが来る、大丈夫、何かあっても、それが私に悟れなくても大丈夫。
周りの状況がこんなにも分からないのが、ここまで恐ろしい事だとは思わなかった。
『…、ッッ!!?』
長く感じられた静寂の世界が終わりを告げたのは、突然頭に何かが柔らかく触れてから。
瞬時に悟りそうになるのを我慢するも、脈打つ速度が更に加速する。
『…?、…??』
しかし、覚えのある撫でられ方に、手首に触れられて目を開けた。