第7章 燐灰石の秘め事
事は私が参謀長としての仕事を果たすべく、構成員達に通達書を出し、それを徹底していただくべく分身を使って全構成員に直接その指示を口頭でも伝えに回っていた日のことである。
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『…いや、多分首領ないし幹部の誰かが全員集めて指示出すのが一番だと思うんですが』
「いやいや、何言ってるのさ。作戦練った作戦参謀長さんは君だよ?」
『だから、私の名前を出したところで聞いて貰えませんって』
「参謀係を差し引いても君は準幹部だ、問題ない」
“こんな小娘がねぇ?あんなののどこが作戦だっての”
“中原さんに取り入ってる子供なぁ…舐めてんのか?俺らの事”
“そもそもこんな餓鬼に命令される筋合いねえんだよ、参謀なんか他にもっと適任がいんだろうに”
既に、反感しか買っていない。
分身達から吸収する心の声に、噂話。
黒蜥蜴の舞台に関しては芥川さんや立原君の影響が大きいせいか割と皆さんすんなり受け入れてくださるのだが、まあ反論の多いこと。
そりゃまあそうだ、三人組作って捕縛具装備してお互いに助け合える位置で見張ってね♡なんて、こんな事態でもない限り私だって考えないし意味だってほとんど見いだせない。
「俺のご主人様だろ、安心しろって」
だから余計に疎ましく思われてるって、この人も首領知らないのよね多分。
ご主人様と公言したとかそういったことではないのだが、シークレットサービスの契約を結んでからというもの、私のこの人への態度の変貌ぶりが更に悪い方向に進んだと見なされているのだから。
それにこの人もこの人で過度に甘やかすから、まあ嫉妬の多いこと。
今やナンバーワン嫌われ構成員の称号が付けられるほど。
私がこの地位に就いているのに反対し続けている構成員達の裏での呼び名は餓鬼か小娘か雑魚か、はたまたビッチか男好き。
逆に私と中也さんの関係を知ってそれを肯定し、私の地位にも納得する一部の構成員達からは中也さんの主、中也さんの嫁、普通に準幹部か参謀長、そして最も多いのがお嬢。
『それ誰にでも言ってないでしょうね…?』
「プライベートで聞かれたら適当に流すのによく使ってるけどな」
『…はぁ、』
頭が痛い。
そして何より、部下達からの圧倒的支持率を誇る中也さんを尊敬する女性構成員達から向けられる目といえば。
“どうやってこの余裕そうな顔歪ませてやろうかしら”
…あは。