第7章 燐灰石の秘め事
ラウンジで彼にそのまま食事をとらされ、半強制的に食べさせられればちょうど頃合の時間になったので、拠点への移動を開始する。
被害を最小限に抑えるため…そして何よりこの人自身が敵の策略にかからないようにするため、私の指示で普段使用しないルートを通って拠点へと向かうのだが。
『…なんでおんぶ?』
「嫌か?」
『ううん?』
「じゃあ問題ねえな」
いやいやいや、そうじゃなくて。
心の声を読んだら読んだで小さいだの軽いだの柔らかいだの暖かいだの…恥ずかしすぎて聴いちゃいられない。
『…あ、そ、そこ電柱側通った方がいいです。反対側根っこ伸びてるんで』
「!おお、サンキュ」
アスファルトの下に伸びた樹木の根が、張っている。
透視能力でも無ければ気付きもしないのだろうが。
全ての樹木が対象になるのか、はたまた厳選されるのか、そこまでは流石の私にも分からないので避けておくに越したことはない。
というのも、組合の次の作戦が大規模なテロレベルの暴挙であり、ヨコハマ中の樹木を直接的に、そして間接的に傷付けたり、痛めつけたりした者が捕らえたQの異能力である精神操作能力の餌食になるというのを予知したためである。
こればかりは全体に徹底するべきだという考えも勿論ある上に私もそう思いはしたのだが、結果的にそれで全員に通達した所で警備を手薄にする訳にもいかず、しかも組合側にそれを悟られると更に最悪な規模の被害が街中に降り注ぐ別の未来まで見通せたため、首領共々断念することになった。
なのでそこで取った対策としては、幹部格、部隊長クラスは先に指定ルートを辿って拠点に集合。
これは勿論、拠点の防衛のため。
そして他の構成員達はというと、最低三人以上での行動を義務付ける。
更には三人以上のグループが一定間隔で必ず連絡を取り合い、直ぐに駆けつけられる距離にあるようにして…全員に捕縛用の手錠や縄を携帯させ、誰かが呪いを発動させてしまっても他の誰かがそれで暴れたり無差別攻撃を始めるのを阻止させる。
使用用途は詳しく説明はしていないが、状況判断が出来ないような構成員などこのマフィアではとっくに解雇にされるか死んでいる。
まあ、あとはそれを聞いてくれればいいだけなのだが。
『……私信用ないからなぁ、』
「あ?何がだよ」
『別に。心の準備してるだけ』
私の力量不足で、人が死ぬから。