第7章 燐灰石の秘め事
「…ま、今は無理強いしねえけど。でも、言ってくれよ…寂しい時は」
『、…い、や…そん、な……だって、中也さんが転生したところで記憶が残るわけじゃあるまいし』
たとえ、それに成功して貴方が転生し、また私と恋仲になってくれたとしても。
私は、恐らく貴方を好きになることは許されない。
自分可愛さに無理矢理このシステムに巻き込むだなんて、そんなのこの人に対する冒涜でしかないだろう。
「残ってなくても、どうせ俺はお前のこと好きになるよ」
『……そう、いうのは嫌い』
だって、先祖返りのシステムだからでしょう?
同じような道を辿るから、そうなる可能性が高いっていうだけの。
「…んじゃ、とりあえずはあれだな…長生きしてやるから、お前も俺とくっついとけよ」
私の意思を汲んでくれたのか、よしよしとやけに優しく頭を撫でてくれる。
「そんでまあ、いい奴がいたら俺に絶対遠慮すんな。それだけ約束してくれるんなら、納得しててやる」
『…遠慮とかしないし』
「んじゃ、もし転生することになったら来世でもちゃんといい奴見つけろよ?まあ暫くくれてやるつもりねえけどよ」
『どっちですかそれ、』
ははは、と笑われながらもそんなヘンテコな主張が嬉しくて、尻尾がぱた、と振れる。
「んで、いつまでこんな硬いところで座ってるつもり?俺としてはリアにあんまこういう所にいてほしくねえんだけど」
言われて、少し面食らって、考える。
『どうして?』
が、咄嗟に思ったままを口にすると、今度は彼が驚く番だったらしく、目を丸くさせてこちらを見る。
「どうしてって…床に女の子座らせたくねえだろ。それも手前の恋人を」
『そ、そうなんだ…?』
「…そっか、分からなかったか。ゆっくり教えていってやるよ」
言いながら、私を抱きしめていた腕で抱えあげてくれるのにびっくりして、思わず彼の首元に抱きつけば途端に恥ずかしさに見舞われる。
『きゃ、…ッ……、!?ち、違…こ、これは違ッ…!!』
「?何が?」
『へ、あ、いや、何でもな…っ』
「…お前にくっつかれんの、俺は大好きだけど?」
『え、』
そういうことを言うのこの人は。
サラッと。
天然に。
意味が分からないほど簡単に。
『あ、あわ、わ…ッ、ふにゃ、…ッッ』
あまりにも照れさせられて、恥ずかしさにダウンしてそのまま彼に体を預けた。