第7章 燐灰石の秘め事
ファミレスを出ればそのままお礼を言われ、気分よく去っていく男の子達。
大事にならずに済んで少し肩の力を抜いて、そのまま目的だった場所を目指していく。
のだが、よく良く考えれば私、合鍵とか持ってなかったなぁ、なんて。
まあそりゃそうか、相手にしないような子供にせがまれた所で渡す義理なんてないんだし。
少し肌寒くなってきた所で、軽く走っていくことにして。
目的のマンションの前には、散々に心配されていた純血の妖怪さん達が何匹か蔓延ってくれてしまっていた。
『…処刑希望?任せて、そういうの得意なの』
早速襲いかかってきてくれた彼らに向けて九尾に完全変化し、槍を、狐火を構え、戦闘開始。
ああそうだ、ここで勝ったら、多分今度は連れていってくれる。
だって、負けなかったらいいんでしょう?
リア、負けないもん。
強いって証明したら、リアのことまた連れてってくれるでしょう??
悟りの力で攻撃予測をし、人魚の鎮静の力を使って一気に相手をする。
多勢に無勢と言うにはあまりにも戦況が私に有利な気がするが、それで困ることは無い。
不意の攻撃だって、私には通用しないのだから。
余程の実力差がない限り、そんなことにはならないのだから。
…だから、また連れてってよ。
そんな風にして、置いてかないで。
私、そうやって……そうやって、カゲ様にだって一人で置いていかれたのに。
気づいた頃にはそこら中に切り裂いた跡や血痕に、焦げ跡が見受けられる。
まあ、とっとと片付けたいがためにこちらも少し攻撃に掠りにいきはしたけれど、戦闘に支障をきたす程のものじゃあないし。
叩かれた頬の方が、よっぽど痛い。
自殺でもなんでもら計らって、わがまま放題してやればよかった。
そしたらあの人だって本性を晒してくれるはずで。
__危険な目に遭わせたくねぇだけなんだ__
…頭に過ぎってくる声が、邪魔で、死にたくなくなる。
だから、嫌なんだこの力は。
なんで、嫌がってる素振りもないの、あの人の心の中に。
期待しちゃうから、やめて欲しいのに。
変化を解いて、彼の部屋の前まで行って…それから、何をするでもなく大人しく。
ただ、一人でいる事実に耐えられなくて。
じわじわと体温を奪っていってくれる外気が…私を打ち続けていた雨でさえもが、どこか自分の存在を知らせてくれているようで心地よかったのだ。