第7章 燐灰石の秘め事
可愛いとか美人とか、そんな美辞麗句並べ立てられたって、嬉しいのなんてあの人くらいのものだ。
それを実感させられるのがこんなに悔しいなんて、思わなかった。
『へえ…どうしよう。私これでも人待ってるんですよね』
「夜ご飯程度でどう!?」
『…ううん、悩んじゃうなぁ…遠慮し、』
断ろうとした瞬間に予知した。
このままだと、あそこにいるあいつが私とこの人達の間に入って来て無駄な怪我を負いかねない。
それに、その後のことを考えると…大人しく、媚びを売っている方がよほど建設的で。
…あれ、なんで嫌がってんだろ、私。
『……うん、分かった!一軒だけね!』
にぱ、と笑えば怪訝そうにこちらを見ていたそいつも首を傾げ、様子を伺うことにしたそうで、そのまま気をよくした二人に連れられて歩いていく。
別に、いいじゃん。
失うものなんて、とっくに無いのに。
あの人に必要とされないんなら、どうにかして生きてかなくちゃ…呼吸もできなくなってしまうのに。
いいじゃん…いいじゃん、大人しくしてれば許してもらえるんなら。
「名前は?なんて言うの?」
『…あまね』
「へえ、あまねちゃんか。何歳?」
『これでも二十二』
「二十二!?歳上じゃん!」
見えねえな、なんて笑う彼らの目は正しくて、五つも盛った年齢に余計に何かが冷めていく。
それくらいの歳だったら、せめて子供って言われずにすんだのかなって。
思い出しても仕方がないか。
連れて行かれたのはファミレスで、本当に夜ご飯を奢ってくれるらしい。
その後にいけそうならばどこかに連れ込みたいな…程度の、まあ、高校生特有の軽いノリなのでもしかしたら何とかできるかもしれないし。
…ああいや、だから別に、どうなろうがなんともないんだけど。
『未成年さん達が夜遊びしようとしてるの、特別に見逃してあげる』
「バレてた?」
『歳上には見えなくて』
「ははっ、あまねちゃんノリいいね?さては相当遊んでんでしょ」
世間から見たイメージなんて、所詮そんなもの。
そっか、私遊び人なんだ。
『寧ろ奢ったげようか?』
「いいんすか!?」
『その代わり愚痴聞いてね』
「おおっ、色々溜めてんね。いいよいいよ、いくらでも聞く!」
同年代の子達と話をするのは楽なもので、気が紛れる。
知り合いといるよりも、よっぽど。
…消えたいなぁ、