第7章 燐灰石の秘め事
「じゃ、俺は行ってきますんで。首領、くれぐれもそいつが出てこねぇように見てて下さいね」
「ちょっ、中也君!!?いいのかい!?」
「俺はそもそも女子供に現場に向かわせるのに反対ですから」
なんて言って、資料を手にそこを出ていく彼の背中が、どこか遠く感じられて。
簡単に、離れていく。
私の事なんて、気にもしてないかのように。
あ、まって、置いてかないで…置いてかないって、あんなに…あんなに、…
『ちゅ、…や、さん……お願、っ……置いてっちゃ、…』
「…仕事に行くだけだ」
『……か、…ま、って…、?』
「っ、……後でな」
出て行っちゃった。
置いてっちゃった。
こんなこと、今まで無かったのに。
やっぱりイライラしてたのかな、やっぱり目障りだったのかな。
考え始めたら止まらない。
「…リアちゃん、ああ言ってるけど中也君は君のこと心配してるだけで、」
『…分かった。執務室戻る』
「!ほ、本当に…?」
『うん、だって大人しくしてれば迷惑かけないんでしょう?』
「?いや、迷惑とまでは言ってなかったと思…り、リアちゃん、?」
立ち上がって、出ていこうとする私を呼び止める。
「……本当に、嘘ついてない?」
『うん、大人しくしてる』
「後で中也君悲しませるようなこと考えてないかって聞いてるんだけど」
『…何もしないってば』
悲しむとか。
無いし。
首領室から出て、それから中也さんの執務室…に、分身を置いて、狐の力で姿を消して外に出る。
別に、行先なんて決まってないけれど。
連れて行きたくないって言われたし。
ふと、彼を感じられる場所を一箇所思い出して。
そちらに向けて、歩いていく。
拠点を出てしまえば姿を現していたところで、誰にも気付かれることは無い。
いてくれればいいって、癒してくれればいいって、私に存在意義を与えたあの人が…こんどは一緒にいたくないですって。
笑える…
「?おお、リア?お前こんな時間に外に一人は拙いだろ、俺も帰りだからとっとと帰…、?」
知った声が聞こえたのを無視していれば、肩を抱き寄せられる感触。
「か〜のじょ♪暇そうにしてんね?」
『…だぁれ?お兄さん達…悪い人?』
二人組の男の人。
年齢は近いくらい、夜遊びってところか。
「悪い人じゃねえよ?遊び相手探してたらこんな可愛い美人さんがいたからさ」