第7章 燐灰石の秘め事

『なんでまた中也さん我慢なの？リア、今日は中也さんと一緒にいていいって言ったｯ…、絶対やだもん、！！』

｢…リア、｣

『そんな、そんなすぐいなくなるんだったら契約なんてなんの意味もないじゃないっ！、っこっちがどれだけ一緒にいないのが不安かなんて、結局分かんないんでしょう！！？』

リアが段々感情的になってきた。
人前でこれは結構珍しい…いや、相手が首領だから他人でないからなのかは分からないが。

｢今の不安と君に降り注ぐかもしれない実害の不安とを比べると、なんとも…｣

『ｯｯ、私の事なんていいのよ…だって強いもん、弱くない！！もう“作之助”の時みたいに失敗しない絶対！！！』

聞き覚えのある名前に、ぴくりと無意識に反応する。
そりゃああれか、織田作之助…太宰の友人の。

｢それを引き合いに出してもダメなものはダメ。もし君に何かあったら、僕はその時の君と同じようなことを思って責め続ける…中也君もだ｣

『だから、私なんかのことどうでもいいんですって言ってるじゃな＿＿＿＿』

聞こえのよすぎる文句に、気付けば手を出していた。
出さねえようにって気を付けていたのに。

乾きのいい音と共に、自分の手を振り払った進行方向に顔を向ける彼女に、胸が痛む。

ぺた、とそこに手で触れる彼女は困惑気味で、理解が追いついていない様子で。
そのまま膝をついて、まるで出会った頃のようにいたたまれない言葉を並べ立てるこの子を抱きしめる。

教えてやらなければ、ならないのだ。
お前の命は、決して人よりも軽いものなどではないと。

｢…お願い、聞いてくれないか｣

『…ちゅ、や…さ……っ、離し、て』

｢嫌だよ、自信とかそういうんじゃない。お前、力を使ったら使ったでそれこそ純血の妖怪に気付かれるんだろうが｣

『じゃ、じゃあ…何、もしないよ、？お、大人しくしてる…大人しくしてる、から…一緒いていい、？一緒に…』

ご機嫌を伺ってちゃ、意味無いか。

｢……連れていきたくねえっつってんの、分からねえか｣

『へ、…』

声色を変えて、低い声で、言う。

｢お前みてぇな子供、連れていきたくねえっつってんだ。何もしねえならそれこそ来る意味が分からねえ、大人しくするんなら拠点で大人しくしてりゃいい｣

『な、にを…中也さ、…』

｢支援先の条件が少し悪いしな。餓鬼は大人しく部屋に引きこもってな｣