第7章 燐灰石の秘め事
昼間に飲ませた解熱剤が効いてきたのか、かなり調子も良さそうで、顔色が良くなってきた。
「ん、ほら。終わったぞ今日の」
『…残しといていいのに』
「残してたらお前が明日二日分するっつって聞かねえだろ?今まで俺の分まで手伝ってくれてたんだ、たまには甘えとけ」
なでなで。
甘やかすのもそろそろ板についてきたような気がする。
『…ひ、必要じゃない、?リア』
「え?必要不可欠だよ、いねぇと俺死んじまう」
『……どういう辺りが?』
「存在」
『…』
じい、と目線が訴えかけてくる。
またそういうことを言って、と。
いやまあ、嘘じゃないことは重々承知の上でのこの反応なのだろうが。
「…だって俺、好きな奴にそんなに仕事させたくねえしなぁ」
『……それっぽいこと言ったって騙されないから??』
めちゃくちゃ嬉しそうだなおい。
さすがはチョロ子の異名を持つだけのことはある。
付けたのも考えたのも俺だが。
「騙してねえよ。だって、そもそも俺の役に立つことだけが必要になる条件じゃないだろ」
『…や、役に立ちたい…もん、』
「だぁから、それなら甘やかされてりゃいいんだって。そうすりゃ俺も癒されるしお前も俺の役に立てる。ウィンウィンだろ」
むくれる彼女の頬を指で摘んでむにむにといじってやると、これまた心底嫌そうな顔をされた。
まあ、照れ隠しってところだろうけど。
『変態クソ幹部…、こんなに堂々としたセクハラは寧ろおめでたいわね』
「…じゃあやめてやろっか?セクハラ」
『えっ、』
「そんなに嫌なら仕方ねぇよ。なあ?」
『え、いや…し、したくないんですか!?』
「してえけど?」
『じゃあやめる必要ないじゃん!!』
「だからチョロ子ちゃんって言われんだよばァか」
ぴん、と額を軽く指で弾いてやると、少し固まってからようやく事態を理解したらしい。
『騙したの!!?』
「いや、先に嘘ついたのお前だろ。やめて欲しくないくせにそんな風に言うからだぞ」
『っ、だ、…じゃ、あ…も、もっと構ってって言うの、?お仕事中に??』
「仕事終わったっての」
『……か、構って?』
「…そういうことなら喜んで」
よっ、と抱き上げてやれば嬉しさを噛み締めるようにぎゅううぅ、と抱きついてきた。
あー可愛…反抗的なのもいいけどな。
最終的に自分から甘えにくんだから。