第7章 燐灰石の秘め事
思いっきり平手打ちをしたあとが彼の頬に紅葉マークを作り、そのまま仕事に戻ってもらうことで中立案となる。
逃げようと思ったのに。
聞けば、他の野郎の元に置いていくわけがないだのなんだのと…独占欲のオンパレード。
言葉にするのは一言二言、それも最もらしい言葉に包んで私に言い聞かせられたものの、その心がダイレクトに聞こえてしまう私にとっては下心しか読み取れずにショート寸前。
極めつけは、俺を置いて他の野郎と二人きりかよという、どこかの私が常々わがまま言うようなその心根。
仕方がないから手元に置かれてあげるけれど、これ以上私の心を乱されてなるものか。
「…何か飲んどけ。水分とらねえと熱下がらな『っひぅ、…ッ』……気遣うのはOKしろよ!?不可抗力だろそんなん!!」
『だ、いじょぶ…だも、ん……ちょ、っと軽く脳イき状態が続いてるだ、けで…っ、♡』
__そんな反応されっとこっちだってムラムラしてくるっつの…__
逃げ場がない。
心の中まで犯されてるようなものだ、こんなの。
全身がぶるぶるする。
軽くイかされ続けているのは事実で、少し暴走気味な程に彼の思考を読み取ってしまう。
しないようにしてるのに。
なのに言うことを聞いてくれない。
だから嫌だったんだ、心を許すのなんて…気にするような人を作るのなんて。
「とりあえず、下手にこれ以上いじらねえって誓うか、……ッ!!?リア!!?」
『え…、ッ!!?なんでこっち見…っ、ち、中也さんがこっち見て…っ、え、あ…ッッ』
「水こぼしてる!!気づかなかったのか!?あああああ、とりあえず拭くもん持ってくっからペットボトルの蓋閉めと……っ、リアさん、??」
離れようとする彼の服を無意識の内に掴んでいたらしい。
『あ…え、……あ、えっとあ、の…』
「…分かった、いる。いるから…とりあえず服脱げ」
ドキリとして、思考が一瞬停止する。
「そしたら服が乾くまで布団被って待ってりゃいい。お前の身体拭くくらいならハンドタオルでも十分だろ」
『……わ、分かっ…、』
「…………どっちだよその顔は…あー…見ないで欲しいんなら絶対見ねえよ??俺」
それは、そうなのだけど。
気にされない風にされるのもそれはそれで寂しいというか…少しくらいソワソワして欲しいというか。
「…俺にして欲しいんすか、お嬢さん」
『ッ、…う、ん』