第7章 燐灰石の秘め事
『中也さん、お仕事しないの?』
「ん?くっついてて欲しそうにしてる子がいるからまた後ででいいかなって」
『……何も言ってない』
「俺がお前のこと、そんなに考えてない奴だと思うか?」
『…分かんない、です』
思う、とは言えない。
だって貴方は私の事、こういう関係になるより前から、ずっと見てくれる人だった。
だけど、断定するのは恐ろしいもので、心の底から気を許し切ってしまうのがどれほど危うい行為なのかは…身をもって、知ってきた。
「……考えてて欲しいとは、思う?」
『え…、…なん、で?』
「答えてくれたら、俺はそれ、叶えたくなっちまうから」
ずるいことを言う。
こんなことを言う人間がいるなんて。
私が恐ろしいものを、ちゃんと分かっているからこその言い回しだ。
言ってみ、と、穏やかな声で聞かれるのに、素直にこくりと頷いた。
するとそれがわかっていたとでもいうような顔で微笑み、私をまた撫でる。
恥ずかしさに掛け布団で口元を隠せば、それはいただけなかったらしくすぐに耳元に彼からの抗議の言葉が襲いかかってきた。
「隠していいと思ってんのか?」
耳の先までブワッと熱くなって、布団から手を離せばに、と笑う彼。
ずるい…完全に私の事、理解して掌の上で遊んでるみたい。
目のやり場に困るとはこういう事ではなかったはずなのだが、今、どこを見ても刺激が強い。
存在そのものが媚薬のような人だ、なんて…私も相当頭がやられてしまったらしい。
『……そ、な…見てて、楽しいですか…?』
「ん?…いや、好きだなと思って」
『っへ、…え、…!!?!?、』
あまりにもストレートにぶつけられて、心臓ごと射抜かれたような気分だ。
困惑しきった頭ではどうにも出来ない羞恥に、咄嗟にうつ伏せになって彼を避ける。
しかし、いいように変化させられてしまったのが運の尽き。
「頭隠して尻隠さずたぁこの事だな…リアちゃん、さっき俺顔隠すのはやめとけって忠告しなかったか?」
『っひ、!!?、ぁ、し、尻尾…ッ、!!!』
くるくると、楽しそうに指で私の尾で遊び始められるのに軽くまた頭がパニックになる。
それから更に髪を避け、項に吸いつかれればたまらない。
『ダメッ、ダメ!!!今すぐイッちゃ、あ、ぁ…キちゃうからぁ、あ、あっ……!!、!!?』
「え、…ちょっ、リア!!?」