第7章 燐灰石の秘め事
『も、…いらな、ッぅ…ふ、っ、』
キスをしてくれとせがみはしたが、こんなにたくさん降ってくるなんて聞いてない。
だめ、こんなにされたら壊れちゃう。
私の弱いとこ、全部埋め尽くすみたいに優しくしないで。
『っは、……も…や、ら……これもう嫌…ッ』
「……変になるからって理由なら、聞いてやらねえけど?」
『ッッ!!!、…っく、そ、サド…ッ』
ググ、と肩を両手で押してもビクともしない。
力もまともに入んないし。
心読んだところで私を褒めたり慈しんだりするばかりで、私の頭をおかしくする。
だから、早々に読むのをやめて、理性を保とうとして。
__わかりやすい奴…__
なのに触れられてしまうから、流れ込んでくる声にさえ、解されていく。
『ヒッ、ん…♡……、……っ!!!?』
流されそうになる。
だから今度こそって、顔を無理矢理横に背けて、自由にさせてくれていた手で唇を隠し、それを拒む。
別に深い方のキスを繰り返されていたわけでもなければ、私の身体に手を出されていたわけでもない。
しかし、だからこそ…慣れていない。
『…も、う……終わり、だから』
ぎゅう、と身体を包み込まれれば、何も怒りもせずに頭を撫で始める。
いちいち胸が締め付けられて仕方がない、なんなのこの人は本当に。
「…流されちまっても、裏切らねえよ」
『へ、…』
「やましい目的があってこんなことする人間じゃねえっつってんだ。ゆっくり慣れていってくれりゃいい…無理させたな」
すまなかった…ではなく、流れ込んできたのはありがとうという言葉。
そしてまた軽く頬やおでこに口付けられるのに、身体が震える。
あれ、そういえば私がこの人を選んだのだって、こんな風に風邪ひいてるときだったっけ。
…それなら、許してくれるかな。
『……ちゅ、やさん』
「!何?」
『…あの、……ほん、とにリアでいいの…?も、もっと他にだって、いっぱい…扱いやすい女の子、いっぱい、いま…す』
「…泣きながら聞いてんじゃねえよ、アホ」
顔を彼の方に向けられたかと思いきや、そのまま手を口元から退かされる。
かと思えば退かした手を無碍に扱うつもりは無かったらしく、指を絡めさせて私の自由を奪ってくれてしまう。
「これのどこが扱いにくいのか教えてみ…俺は自分が満足してんの、分かってるからこうして可愛がってんだよ」